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映画・演劇のレビュー

『ジュリエット( 茱麗葉)』

2011-09-21 20:49:38 | 映画
 昨年の東京国際映画祭では『ジュリエット』というタイトルで上映された『茱麗葉』を例によってノースーパーで見る。3話からなるオムニバス。監督はホウ・チーラン(侯季然)〈第1話「ジュリエットの選択」〉と シェン・コーシャン(沈可尚)〈第2話「ふたりのジュリエット」〉そして、『熱帯魚』や『ラブゴーゴー』のチェン・ユーシュン(陳玉勳)〈第3話「もうひとりのジュリエット」〉の3人。

 これは期待に違わぬ傑作だ。3話ともおもしろい。最初の2本はタイトル通りの悲恋ものなのだが、チェン・ユーシュンは、そんな普通のことをするはずもない。先の2本の感動を一瞬で帳消しにして、忘れさせるようなとんでもなく切ないコメディーに仕立てる。このエピソードのジュリエットは、なんとおかまの中年のおっさんである。失恋ばかりの人生で、とうとう40歳になってしまう。人生に絶望したおっさんは首を吊って自殺しようとするがなかなかうまくいかない。そんなこんなをしていると、CMの撮影をしていたスタッフと出会い、なんとエキストラで撮影に参加することになる。バカバカしいお笑いなのだが、それがなんとも切ない新しい恋につながる。このエピソードがあまりに強烈すぎて、もともとはしっとりしたラブストーリーだったのに、なんかそのことを忘れてしまいそうになる。

 もちろん第1話もすばらしい。あまりに定番の展開をするラブストーリーで、これもまたなんとも切ない話だ。住む世界の違う2人が偶然出会い、彼女(ビビアン・スーが演じる)は彼のことを密かに憧れる。初恋だ。足が悪い彼女は町の印刷工場で働いている。そこに大学生がやってくる。彼はちょっとヤバい原稿(彼は学生運動に関わっていて、その機関誌だ!)を持ってきて印刷依頼をする。社長は断るが彼女は密かにその原稿を受け取り秘密で印刷して、彼に届ける。彼が喜ぶ顔を見るのがうれしい。大学のキャンバスを歩く。彼のいる部室に入る。自分も彼らと同じ空気を吸っているのがうれしい。自分もこの瞬間、彼らの仲間になれた気分になる。一瞬のことでしかないのだが、ただそれだけでも幸せなのだ。昼でも薄暗い工場で活字を拾い印刷機を回す。それが彼女の生活だ。そんな毎日に一条の光がさす。だが、幸せは長くは続かない。だいたい彼は彼女のことをなんとも思っていない。ただの片想いなのだ。自ら招いた破局が彼女を苦しめるラストは痛ましい。

 第2話もどうしようもない恋物語だ。歌姫と人形遣いの青年。30年の歳月を経ての残酷な再会。2つの話が交錯していく巧みな構成。何よりもまずロケーションがすばらしい。彼らが住む村。精神病院。舞台となる空間がとても魅力的に捉えられてある。男を精神病院の送り届けるタクシーの運転手が主人公だ。彼女は父親が足を挫いたため代わりに運転を引き受ける。そんな彼女のドラマと、30年前の話が並行して描かれる。2つが見事に重なる。作品としてはこれが一番面白い。でも、これが一番セリフが多くて、細部がよくわからなかったのも事実だ。実を言うと、見てから少し時間がたつので、こうして書きながらもうまくストーリーが思い出せてない。だから、少しごまかした。ごめんなさい。

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