ジェット団とシャーク団の2プログラム。それぞれ2話からなる1時間ほどの作品だ。今回のevkk(エレベーター企画)は月眠ギャラリーというスペースを使って横長のアクティング・エリアに5人の役者たちを並べ、動きも最小限に抑えて語り聞かせのスタイルを取る。照明は5人がそれぞれ自分のランプスタンドを使って、音源は、膝の上の置いたラジカセによる。
最初に見た2本(ジェット団)は今までのevkkではあまり類を見ないタイプ。こちらは分類すれば「昼の物語」だ。太陽の光のもとで語られる。そして、とても静かで(それは今までもないことはない)淡いタッチ(これが外輪さんとしてはめずらしい)の作品だ。そして、もちろんとても哀しい。
一つ目のエピソードは、海はもちろん、なんとプールもないという小さな町で暮らす老人3人に水泳を教える若い女性(坂口ゆい)の話。洗面器に塩水を張ってそこに顔をつけることから始まるレッスン。3人はその奇妙な泳ぎの練習を通して、幸せな一時を過ごす。というか、この3人以上にコーチをする22歳の彼女の方が幸せそうだ。年若い先生と無邪気な老人たち、彼らが心通わせ会うほんの一時の夏の物語。
もうひとつのエピソードは歯医者に通うことになる女の子が、歯科医院の横にある公園で、同じ年頃のフィリピン人の母親を持つ女の子と出会う話。毎週毎週通院の帰り、車で迎えに来る母親を待つ時間、ここで、その少女と遊ぶ。2人は別々の校区なのでそれまで全く接点はなかった。そして、家も離れているから、ここでしか会うことはない。ジャングルジムで遊び、ブランコに乗り、いろんな話をする。彼女はクラスで虐められている。家では虐待を受けている。どこにも居場所がない。なのに、いつも明るく元気で、歯医者での治療を終えるのを公園でひとり待っていてくれる。イジメや虐待は、彼女の口から語られたのではない。彼女と同じ学校に通う女の子(歯医者で知り合った)から、聞いた話だ。女の子の治療が終わると同時に2人のつき合いも終わる。これも、ほんのひとときの期間限定の物語だ。
動きを最小限に抑えて、感情も出来る限りあからさまには出さない。表情も淡々としたまま、語られる。でも、そうすることで、彼女たちの諦念や哀しみはより深いものとして伝わる。
次の2本(シャーク団)は「夜の物語」。闇の光の中で語られる。最初のエピソードは叔父と姪っ子の話だ。きっとまだ30代後半くらいで、もう本当なら充分大人である叔父(土本ひろき)と、高校受験を控えた女の子である彼の姪っ子(稲実栞)。彼女は秘かにこの叔父さんにあこがれを抱いている。2人でサンシャインの水族館やプラネタリウムに行くシーンから始まる。彼女の知りたいことをなんでも知っている叔父さんへの淡い恋心。それを彼は、真摯に、誠実に、はぐらかすことなく受け止める。彼は「メールしようよ」という彼女の申し入れを拒否する。その代わり、メールではなく、手紙によってやりとりすることを求める。それならOKだ、と言う。彼女は初めて手紙というものを書くことになる。手紙によるタイムラグが2人の距離だ。
もうひとつのエピソードは、4話の中で唯一ひたすら重くて暗い話だ。ひとりの女性(若林ゆい)の心の闇を描く。他者を自ら拒絶し、心に鍵をかけてしまう。仮面を付けた周囲の人たちの姿は、まるで彼女を拒絶しているかのように見えるが、そうではない。このエピソードのみ、いささか観念的だ。いつものevkkらしい作品だ。こういうのを見ると、外輪さんらしいからほっとする。でも、今回はこれだけが異色である。ほんのちょっといつもと違うevkkが新鮮だったから、他の3編に較べてこれは少し物足りない。
今回は、いつもにも増してシンプルだ。あまり仕掛けも使わないで、あっさりした見せ方に徹したのもよかった。お話を語り聞かせるという姿勢を貫く。
最初に見た2本(ジェット団)は今までのevkkではあまり類を見ないタイプ。こちらは分類すれば「昼の物語」だ。太陽の光のもとで語られる。そして、とても静かで(それは今までもないことはない)淡いタッチ(これが外輪さんとしてはめずらしい)の作品だ。そして、もちろんとても哀しい。
一つ目のエピソードは、海はもちろん、なんとプールもないという小さな町で暮らす老人3人に水泳を教える若い女性(坂口ゆい)の話。洗面器に塩水を張ってそこに顔をつけることから始まるレッスン。3人はその奇妙な泳ぎの練習を通して、幸せな一時を過ごす。というか、この3人以上にコーチをする22歳の彼女の方が幸せそうだ。年若い先生と無邪気な老人たち、彼らが心通わせ会うほんの一時の夏の物語。
もうひとつのエピソードは歯医者に通うことになる女の子が、歯科医院の横にある公園で、同じ年頃のフィリピン人の母親を持つ女の子と出会う話。毎週毎週通院の帰り、車で迎えに来る母親を待つ時間、ここで、その少女と遊ぶ。2人は別々の校区なのでそれまで全く接点はなかった。そして、家も離れているから、ここでしか会うことはない。ジャングルジムで遊び、ブランコに乗り、いろんな話をする。彼女はクラスで虐められている。家では虐待を受けている。どこにも居場所がない。なのに、いつも明るく元気で、歯医者での治療を終えるのを公園でひとり待っていてくれる。イジメや虐待は、彼女の口から語られたのではない。彼女と同じ学校に通う女の子(歯医者で知り合った)から、聞いた話だ。女の子の治療が終わると同時に2人のつき合いも終わる。これも、ほんのひとときの期間限定の物語だ。
動きを最小限に抑えて、感情も出来る限りあからさまには出さない。表情も淡々としたまま、語られる。でも、そうすることで、彼女たちの諦念や哀しみはより深いものとして伝わる。
次の2本(シャーク団)は「夜の物語」。闇の光の中で語られる。最初のエピソードは叔父と姪っ子の話だ。きっとまだ30代後半くらいで、もう本当なら充分大人である叔父(土本ひろき)と、高校受験を控えた女の子である彼の姪っ子(稲実栞)。彼女は秘かにこの叔父さんにあこがれを抱いている。2人でサンシャインの水族館やプラネタリウムに行くシーンから始まる。彼女の知りたいことをなんでも知っている叔父さんへの淡い恋心。それを彼は、真摯に、誠実に、はぐらかすことなく受け止める。彼は「メールしようよ」という彼女の申し入れを拒否する。その代わり、メールではなく、手紙によってやりとりすることを求める。それならOKだ、と言う。彼女は初めて手紙というものを書くことになる。手紙によるタイムラグが2人の距離だ。
もうひとつのエピソードは、4話の中で唯一ひたすら重くて暗い話だ。ひとりの女性(若林ゆい)の心の闇を描く。他者を自ら拒絶し、心に鍵をかけてしまう。仮面を付けた周囲の人たちの姿は、まるで彼女を拒絶しているかのように見えるが、そうではない。このエピソードのみ、いささか観念的だ。いつものevkkらしい作品だ。こういうのを見ると、外輪さんらしいからほっとする。でも、今回はこれだけが異色である。ほんのちょっといつもと違うevkkが新鮮だったから、他の3編に較べてこれは少し物足りない。
今回は、いつもにも増してシンプルだ。あまり仕掛けも使わないで、あっさりした見せ方に徹したのもよかった。お話を語り聞かせるという姿勢を貫く。