最初はとても不愉快だった。つまらない、と思った。主人公の女の子の気持ちがまるで見えない。これは嘘臭いラブストーリーでしかなかった。だが、後半からの急展開。凄い小説になる。思いもしない大胆さで、でも、それが今度は嘘くさくはない。彼女の気持ちがわかる、だなんて思う始末だ。何を勝手なことを言うのか、と呆れられそうだが、正直な気持ちなのだから仕方ない。
好きな男の子が、自分以外の女の子を愛している、らしい。学校では2人はまるで話もしないし、目も合わさない。彼女から彼への手紙を盗み読みする。彼は教室の机の中にそれを隠している。彼女に接近する。好きな男の恋人である彼女を誘惑する。最初は友達になる。そして、恋人になる。肉体関係すら持つ。女なんか好きではない。でも、彼の恋人を奪い去りたい。それだけが理由だ。でも、好きな男の彼女は、自分のことを好きになってくれる。抱き合うことで心が通じる。女2人、男1人。三角関係のラブストーリーだ。でも、そのいびつさはこれだけの説明からでも充分に伝わるだろう。だが、ここに描かれるのは、そんな表層的な問題だけではない。
彼女の想いは、どこまでもエスカレートする。もう、とめられない。彼に強引に迫る。だが、彼は哀れみを込めた目で見るばかりだ。放課後の教室で裸になって抱きつく。もうそれは狂気だ。プラトニックな関係を5年間貫いていた2人の間に入り、むちゃくちゃにする。一途な想いのエスカレート。だが、そんな醜い感情が、だんだん不思議な輝きすら見せる。
これは2人の愛が、主人公である邪魔者の介入で壊れていく、というストーリーではない。どうしようもない想いは主人公だけのものではない。彼女が巻き込む2人の恋人たちが抱えるものも実はいびつな感情だということが、やがて明らかになる。本当の気持ちって何なのか。そんなもの、自分にも分からない。
主人公の女が、ただの変質者であれば、分かりやすいのだが、彼女の屈折した想いは、もともとは、ただの純愛だ。好きな人には恋人がいて、自分のほうを見てくれない、というただの切ない恋心なのだ。しかも、彼女はとてもきれいな女の子で男の子たちはなんとかして、彼女を振り向かせようと努力している。そんな女の子がここまで、惨めで醜い行為に走る。それが最初は不快だったのだ。でも、ある一線を越えたところから、これは今までになかった物語であることに気づく。そこからである。人間がどこで壊れていくか、しかも、壊れながら、それをなんとかして持続していこうとする。その結果思いもしない局面に自分を追いつめる。
最後が少し唐突で、もう少しなんとかしてもよかった気がするけど、決して悪くはない。電車の中で野球帽の子供とたたずむラストシーンは悪くはない。これはきっと映画化したら、おもしろいものになるはずだ。ここに描かれるドラマが生々しくならないなら、うまくいく。かなり微妙な話なのでバランスが難しいだろうけど。
この小説自身も、先にも書いたが、最初は立ち位置の取り方が、難しくて、前半は失敗している。だが、それをこんなにも見事に収めた。それってすごいことだ。3人の高校生男女の関係は一見通俗のように見えて、その実どこにでもない特別な関係性を形作る。圧巻だ。
好きな男の子が、自分以外の女の子を愛している、らしい。学校では2人はまるで話もしないし、目も合わさない。彼女から彼への手紙を盗み読みする。彼は教室の机の中にそれを隠している。彼女に接近する。好きな男の恋人である彼女を誘惑する。最初は友達になる。そして、恋人になる。肉体関係すら持つ。女なんか好きではない。でも、彼の恋人を奪い去りたい。それだけが理由だ。でも、好きな男の彼女は、自分のことを好きになってくれる。抱き合うことで心が通じる。女2人、男1人。三角関係のラブストーリーだ。でも、そのいびつさはこれだけの説明からでも充分に伝わるだろう。だが、ここに描かれるのは、そんな表層的な問題だけではない。
彼女の想いは、どこまでもエスカレートする。もう、とめられない。彼に強引に迫る。だが、彼は哀れみを込めた目で見るばかりだ。放課後の教室で裸になって抱きつく。もうそれは狂気だ。プラトニックな関係を5年間貫いていた2人の間に入り、むちゃくちゃにする。一途な想いのエスカレート。だが、そんな醜い感情が、だんだん不思議な輝きすら見せる。
これは2人の愛が、主人公である邪魔者の介入で壊れていく、というストーリーではない。どうしようもない想いは主人公だけのものではない。彼女が巻き込む2人の恋人たちが抱えるものも実はいびつな感情だということが、やがて明らかになる。本当の気持ちって何なのか。そんなもの、自分にも分からない。
主人公の女が、ただの変質者であれば、分かりやすいのだが、彼女の屈折した想いは、もともとは、ただの純愛だ。好きな人には恋人がいて、自分のほうを見てくれない、というただの切ない恋心なのだ。しかも、彼女はとてもきれいな女の子で男の子たちはなんとかして、彼女を振り向かせようと努力している。そんな女の子がここまで、惨めで醜い行為に走る。それが最初は不快だったのだ。でも、ある一線を越えたところから、これは今までになかった物語であることに気づく。そこからである。人間がどこで壊れていくか、しかも、壊れながら、それをなんとかして持続していこうとする。その結果思いもしない局面に自分を追いつめる。
最後が少し唐突で、もう少しなんとかしてもよかった気がするけど、決して悪くはない。電車の中で野球帽の子供とたたずむラストシーンは悪くはない。これはきっと映画化したら、おもしろいものになるはずだ。ここに描かれるドラマが生々しくならないなら、うまくいく。かなり微妙な話なのでバランスが難しいだろうけど。
この小説自身も、先にも書いたが、最初は立ち位置の取り方が、難しくて、前半は失敗している。だが、それをこんなにも見事に収めた。それってすごいことだ。3人の高校生男女の関係は一見通俗のように見えて、その実どこにでもない特別な関係性を形作る。圧巻だ。