こんな映画が作られていたとは知らなかった。これは大阪では劇場公開されていないのではないか。上智大学の先生をしているというジョン・ウィリアムズという(まるで音楽家みたいな)人が脚本、監督した日本映画である。
2018年に封切られたらしい。原作は『変身』『城』の言わずもがなのフランツ・カフカの不条理小説。それを現代の東京を舞台にして作った自主映画だ。無名のメインキャストで綴る。安っぽい素人臭さが鼻に付くから、途中で何度も止めようかと思ったけど、結局最後まで見た。これが一体どこに行き着くのか、少し気になって。まさかのラストはなく、予定調和に終わる。不条理なのに。
冒頭、朝起きたら目の前に知らない男がふたり立っている。驚きより恐怖、唖然。しかも彼らは罪状もわからないまま男を犯人扱い。だが逮捕され連行されることなく、ふたりは「自分たちは連絡しに来ただけ」と言う。勝手に部屋に入って好き放題。そのわけのわからなさは現実なら怖すぎる。
それでも仕方ないから、彼はいつも通り仕事に行く。これは夢ではないか、と思う。そして帰宅したら彼らはもういない。あれはなんだったのだろうか。やはり夢か?だが、裁判所からの召喚状が届く。あれは夢ではない。
ここから始まる不思議の連鎖に訳もわからないまま流されていく。理由もなく、意味もわからない。それを映画は淡々と描く。つまらないわけではないけど、映画にはここに本来必要な緊張感がない。映画はどこか弛緩している。だから説得力がない。つまらないわけではないけど、面白くはない。こんな映画が誰も知らないまま作られて消えていくのだろう。この映画よりそんな今の時代の方が不条理だ。