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映画・演劇のレビュー

『トリシュナ』

2013-05-28 22:39:51 | 映画
マイケル・ウインターボトム監督の新作なのだが、今回は劇場未公開となってDVDリリースのみ。東京国際映画祭では上映されたようだが、その扱いはないだろ、と思う。

トマス・ハーディー原作の『テス』の映画化である。昔、ポランスキー監督がナスターシャ・キンスキー主演で映画化している。あの時は3時間の大作だったが、今回はそれを現代のインドを舞台にして、大胆な改稿を施し2時間弱に仕立てた。

 始まりは いつものように僻地旅行もののスタイルだ。男はイギリスからやってきた友達と、旅する。ウインターボトムは本当にこういうのが好きだ。インドの辺境の場所。そこで出会った女(彼女が主人公トリシュナだ)を好きになる富豪の息子であるその男。

 彼は生活に困っている彼女を自分の父親が経営するホテルで働かせる。やがて2人は愛し合う。だが、それは彼からの一方的な関係だ。彼女に選択の余地はない。そこにあるのは搾取される側とする側、弱者と強者という図式だ。こんな古典的なドラマを現代インドに置き換えると、それでドラマは成立する。

なんだか複雑な気分だ。最後はトリシュナが男を刺殺し、自分も死ぬ。自由を求めたはずの彼女の旅はなんだったのか。いろんな要素をごちゃまぜにしてあり、全体のバランスはあまりよくない。本当は彼女の自立の話なのだろうが、結局は男から逃れられない、という話になってしまう。これではなんだかもったいない。あんなバカを殺さなくてもいいから、彼女にはもっと別の生き方をして欲しい。

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