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映画・演劇のレビュー

楽市楽座『バードフラワー』

2015-08-25 18:34:42 | 演劇
今年も楽市のツアーが大阪にやってきた。今回の作品は、いつも以上にシンプルで静かな芝居。この単純さがいい。ストーリーなんか、もうほとんどないに等しい。90分の至福の世界、そこを彩るいくつもの歌がいい。心地よい時間が過ごせれる。今回は佐野キリコさんが主役(彼女はお姫様もいいけど、それより、今回のような男役の方がいい)、彼女の歌声を思う存分聞かせるのもいい。廃墟となった劇場で歌うシーンは本編の白眉だ。

フラミンゴの花子とカエルのぴょん吉のところに、天国から紅孔雀(キリコ)が落ちてくる。彼は花形役者だったけど、天国に嫌気がさした。この地上で旅回りの役者として過ごすことにする。そんな彼ら3人の旅が描かれる。

空の上にある天国は夢の楽園なんかではない。鼻持ちならない金持ちがいる。彼らは自分のことしか考えない金の亡者。そんな世界に愛想を尽かした紅孔雀が地上(地獄)で過ごす快適な日々が描かれる。

今日(8月24日)のゲストはMayの金哲義。彼がマダン劇を演じる。2つの村の2人の少年のお話。彼らの友情と破局。劇中劇となる彼の一人芝居はこの作品本編と完全にリンクした。天国と地獄。天と地。大地にはたくさんの虫たちが生きている。お茶碗の中に盛られた土の中には無数の生き物がいる。一部の選ばれた人ではなく、無数の虫たち。彼らの営みを肯定する。貧しいけれど、幸せ。

ここに描かれるのは弱者への愛だ。さらには、戦争にも言及する。ヒロシマ、ナガサキ、チェルノブイリ、フクシマ。アウシュヴィッツ。生き物の営みを脅かすもの。

ラストの花子の死を描く部分の後、ひょっこり死んだ彼女が登場するのもいい。そういう軽やかさが身上なのだ。


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