安田真奈監督の劇場用長編第1作。頑固一徹の父(沢田研二)と、彼を受け入れる家族に反発する次女(上野樹里)を主人公にして、お互いの意地の張り合いと、譲らない姿を通して彼らの深い親子愛が見えてくるハート・ウォーミング。
終始不機嫌で、むっとした顔をして、誰に対してでも摑みかからないばかりの勢いでぶつかってしまう上野の姿が、ちょっと腹が立つくらいに描かれてある。この頑なさがいい。そこまでしなくてもいいんんじゃないか、と思わせるくらいなのが上手い。これだけやっても嫌な女にはならない。彼女は甘えたいだけだから(許されるということを知ってる)こういう行為をしている。そのことが僕たち観客にもよくわかるし、何より彼女自身が良く知っている。それだけに「ああ、私甘えてるだけなんだ」と自覚しているから本当はそんな自分の弱さに腹を立ててるのがわかる、ということなのだ。
そしてそのことも、よく分かっているから父親は彼女を許している。そんな優しさがよく伝わってくるから、この映画は素敵なのである。沢田研二は自分の仕事に対しては、頑固だが、娘たちには本当に優しい。だから彼女たちは(3人姉妹)こんな父が大好きで、死んでしまった妻もまた、そうなのである。
和歌山の新宮を舞台にそこから1歩も出ない映画である。(なんと東京のシーンまで和歌山で撮影したらしい)田舎の小さな電気店イナデンを切り盛りして、ずっと真面目1本で生きてきた父。近所に安売りの量販店が出来、お客は根こそぎそちらに奪われてしまい、今では電気修理屋状態になっているが、それもよしとしている。ろくなお金にもならないのに、お得意さんのために毎日飛び回っている。それを生きがいにしている。家計は苦しいが、なんとか食べていけたらいい。ご近所の皆さんに喜んで貰えたらそれだけで満足だと思っている。なんだか、こんなお人よしがこの世界に今も「生息」しているっていうだけで、幸せな気分になれる。
上野樹里は本当はこのお父さんが大好きだ。だから反発する。この父が工事中屋根から落ちて骨折し、しばらく動けなくなり、そのため田舎に帰ってきたのだが、この休暇を通して、彼女のほうが回復していくことのなる。イラストライターになるため上京したが、東京でも人とぶつかるばかりで、うまくいかないが、意地を張ってきた。そんな彼女がこの1ヶ月父の変わりに電気店で働き元気を取り戻す。実はそれだけの話なのだ。そのささやかさがいい。
地方から、こういう手作り映画の傑作が生まれたことを心から喜びたい。カンヌでグランプリを取った河瀬直美とは別の意味で、地元に密着して、自分の映画を作っている安田真奈の姿勢には共感できる。それは我らが横田丈実監督にも通ずる。こういう関西ローカルの作家が、今「新しい日本映画の波」を作ってきているような気がして、なんだか嬉しい。
終始不機嫌で、むっとした顔をして、誰に対してでも摑みかからないばかりの勢いでぶつかってしまう上野の姿が、ちょっと腹が立つくらいに描かれてある。この頑なさがいい。そこまでしなくてもいいんんじゃないか、と思わせるくらいなのが上手い。これだけやっても嫌な女にはならない。彼女は甘えたいだけだから(許されるということを知ってる)こういう行為をしている。そのことが僕たち観客にもよくわかるし、何より彼女自身が良く知っている。それだけに「ああ、私甘えてるだけなんだ」と自覚しているから本当はそんな自分の弱さに腹を立ててるのがわかる、ということなのだ。
そしてそのことも、よく分かっているから父親は彼女を許している。そんな優しさがよく伝わってくるから、この映画は素敵なのである。沢田研二は自分の仕事に対しては、頑固だが、娘たちには本当に優しい。だから彼女たちは(3人姉妹)こんな父が大好きで、死んでしまった妻もまた、そうなのである。
和歌山の新宮を舞台にそこから1歩も出ない映画である。(なんと東京のシーンまで和歌山で撮影したらしい)田舎の小さな電気店イナデンを切り盛りして、ずっと真面目1本で生きてきた父。近所に安売りの量販店が出来、お客は根こそぎそちらに奪われてしまい、今では電気修理屋状態になっているが、それもよしとしている。ろくなお金にもならないのに、お得意さんのために毎日飛び回っている。それを生きがいにしている。家計は苦しいが、なんとか食べていけたらいい。ご近所の皆さんに喜んで貰えたらそれだけで満足だと思っている。なんだか、こんなお人よしがこの世界に今も「生息」しているっていうだけで、幸せな気分になれる。
上野樹里は本当はこのお父さんが大好きだ。だから反発する。この父が工事中屋根から落ちて骨折し、しばらく動けなくなり、そのため田舎に帰ってきたのだが、この休暇を通して、彼女のほうが回復していくことのなる。イラストライターになるため上京したが、東京でも人とぶつかるばかりで、うまくいかないが、意地を張ってきた。そんな彼女がこの1ヶ月父の変わりに電気店で働き元気を取り戻す。実はそれだけの話なのだ。そのささやかさがいい。
地方から、こういう手作り映画の傑作が生まれたことを心から喜びたい。カンヌでグランプリを取った河瀬直美とは別の意味で、地元に密着して、自分の映画を作っている安田真奈の姿勢には共感できる。それは我らが横田丈実監督にも通ずる。こういう関西ローカルの作家が、今「新しい日本映画の波」を作ってきているような気がして、なんだか嬉しい。