鹿島勤監督の『今日から俺は!!』という映画をご存じだろうか。『ビーバップハイスクール』が受けたから徒花として、企画された。そして、本家とは違う笑いを提示した。あの映画はそんな秀作だった。きっと今の若い世代は知るはずもない。公開当時もまるで顧みられることはなかった映画だけど、実に面白い映画だった。プログラムピクチャーだからこそ、出来るささやかな輝きを呈した。(鹿島監督のこの映画はVシネマとして作られた作品の劇場版だった。そんなことはもう忘れていた。だから面白かったのはVシネ版だったかもしれない)そんなあの漫画の実写化に再度挑む。しかも今頃。あり得ないと思った。時代錯誤も甚だしい。いや、それこそがこの企画のねらいなのだろう。
だいたい、これに先立つTVシリーズ自体があり得ない話だ。だけど、福田雄一はこの40年前のマンガを今の時代に復活させた。しかも、時代背景をそのままにした、というか、(いやいや)それどころか、80年代の風俗を大々的に前面に押し出して見せた。そこを笑いのネタにした。今、あの時代がこんなにも笑える、ということに、驚く。そこで笑わせるドラマという屈折を成し遂げる。バカバカしいと、紙一重。大成功だった。TVは小ネタで勝負する日常のスケッチ。それを映画にしたならどうなるか。
結果だけ言おう。つまらない。TVの二番煎じでしかない。これは大作映画にする企画ではない。それはよくわかっているから、基本はTVの再現、でも、それを2時間やっても飽きるだけ。だからといってアクション大作にしても、この作品のテイストは生かせない。映画向けではなかったのだ。鹿島作品はB級映画であることの利点を生かして、どうでもいいような映画に終始した。だから、反対に輝きを得た。だけど、福田作品はそうは出来なかった。ことほど、この映画化は難しい企画だったのだ。