悪い映画ではないだろう。ちゃんと作られてあるから2時間退屈はしない。役者たちも頑張っている。TV版からの続投である阿部寛は、はまり役だし、それなりに見せ場もあるし、犯人探しも楽しめる。だが、これが映画としての醍醐味とはとてもじゃないが思えない。これはお茶の間で楽しめばいい、というレベルの仕事だ。
映画はこんな簡単なものではない。もっと混沌としていて、ぐちゃぐちゃで、痛ましい。殺人があり、犯人がいて、たくさんの人が苦しんで、でも、生きている実感があって。そんなふうに混沌としたものなのだ。なのに、この映画は、すべてが無菌状態で展開する。作られた世界でしかない。嘘臭いというのではないけど、これでは本当には見えないのだ。子供のために命を失う中井貴一の父親には、リアルを感じない。劇団ひとり演じる教師なんて、ありえない。そんなだから、この事件自体も頭で作り上げたものでしかない。
大体、東野圭吾による原作自体が、リアリティーのないものなのだろうが、それを安易に映画化した結果、毒にも薬にもならない「映画もどき」が出来たのだ。せめて原作批判でもしてくれたなら、いいのだが、その気はない。土井裕泰監督は、素直に映画を作るだけ。彼が今まで作ってきた映画はいずれも悪くはない。今回だって最初にも書いたように悪い映画ではない。そこそこヒットしているのも、観客の支持を受けたからだろう。だが、今回のこの大甘映画を認めるわけにはいかない。『今、会いに行きます』の時は、泣いたくせにこの映画には厳しいのは、ファンアタジーや恋愛ものと、こういう犯罪ものとでは、ポイントが違うからだ。今回は彼の甘さが作品の力にはならない。それだけの話なのである。
最近の日本映画は、TV局が作った安易なものばかりが横行する。どうせ、劇場公開後、すぐTVでオンエアーされるのだ。ここには何のリスクもない。だから、そこには、この1本に命を賭けるというような切実さはないのだ。わざわざ劇場まで足を運ばせるのである。もう少し何かがそこにはあってもいいのではないか。虚しい。
映画はこんな簡単なものではない。もっと混沌としていて、ぐちゃぐちゃで、痛ましい。殺人があり、犯人がいて、たくさんの人が苦しんで、でも、生きている実感があって。そんなふうに混沌としたものなのだ。なのに、この映画は、すべてが無菌状態で展開する。作られた世界でしかない。嘘臭いというのではないけど、これでは本当には見えないのだ。子供のために命を失う中井貴一の父親には、リアルを感じない。劇団ひとり演じる教師なんて、ありえない。そんなだから、この事件自体も頭で作り上げたものでしかない。
大体、東野圭吾による原作自体が、リアリティーのないものなのだろうが、それを安易に映画化した結果、毒にも薬にもならない「映画もどき」が出来たのだ。せめて原作批判でもしてくれたなら、いいのだが、その気はない。土井裕泰監督は、素直に映画を作るだけ。彼が今まで作ってきた映画はいずれも悪くはない。今回だって最初にも書いたように悪い映画ではない。そこそこヒットしているのも、観客の支持を受けたからだろう。だが、今回のこの大甘映画を認めるわけにはいかない。『今、会いに行きます』の時は、泣いたくせにこの映画には厳しいのは、ファンアタジーや恋愛ものと、こういう犯罪ものとでは、ポイントが違うからだ。今回は彼の甘さが作品の力にはならない。それだけの話なのである。
最近の日本映画は、TV局が作った安易なものばかりが横行する。どうせ、劇場公開後、すぐTVでオンエアーされるのだ。ここには何のリスクもない。だから、そこには、この1本に命を賭けるというような切実さはないのだ。わざわざ劇場まで足を運ばせるのである。もう少し何かがそこにはあってもいいのではないか。虚しい。