濱野京子『フュージョン』

　たかが縄跳び、されど縄跳び。ダブルダッチ（二本の縄を使う縄跳び）というらしい。こういうものがあるなんて、この小説で初めて知った。

　今回もまた全くいつもと同じ設定だ。うまくみんなに溶け込めない主人公が、期間限定で、「何か」と出会う。それが今回は縄跳び（ダブル・ダッチ）である。それに夢中になり、そこで出来た普通なら付き合うはずのない仲間と心を交わす。そして、成長する。濱野京子の小説はみんなこのパターンに終始する。

　でも、この幸せはずっとは続かない。だが、それは悲しいことなんかではない。人が成長していくためには、同じところでとどまっているわけにはいかないからだ。だから、新しい挑戦をすることになる。期間限定の幸福な時間はやがてさらなるステージへのジャンピングボードとなる。それはおしまいではなく、始まりの物語を作るのだ。

　まぁ、甘いＹＡ小説だと言われたなら返す言葉はないけど、頑なにこのパターンを繰り返し、そこで、いろんなものと出会っていく彼女の小説を読むのは、とても心地よく、それだけで元気になれる。

　主人公とその仲間の４人だけではなく、周りの人たちも含めて、ここに出てくる人たちはとても優しい。行方不明になった兄も含めて、ひとりひとりが自分の置かれた状況の中でしっかり生きていこうとしているところがいい。