これは酷い。前作も大概な出来だったけど、今回は開きなおったのか、やる気がないのか、もう散々な出来の映画である。先日の清水崇監督の『犬鳴村』も酷かったが、こちらはその比ではない。Jホラーの2大巨匠が並んで討ち死に。
だけど、どちらかというと、これのほうがまだ楽しめるかも。もしかしたら、わざと笑えるようにこういう突っ込みどころ満載の作り方をしたのではないかと思わせるドキドキ感も、ないではないからだ。まぁ、それって呆れた映画、ということでしかなく、そんな勲章はいらないだろう。だいたいそんなことを意図したわけではないはず。だから明らかに失敗。
冗談のように役者たちはみんな大根演技を披露する。前作もそうだったが、成田凌のオーバーアクトには笑うしかない。主人公の3人が3人とも下手すぎて、あきれる。成田は昨年数々の映画で上手いことは証明済みだから、前作とは違い明らかにやらされている。(まぁ、前作も本人のせいではなく、監督の演出プランなのだろう)そして、主役であるにもかかわらず無能な男を演じさせられた千葉雄大。彼はただの木偶の坊で、何もしないのだ。サイバー犯罪のプロである成田にすべてを任せて、ただ横でオロオロうろうろしているだけ。こんな主人公見たことがない。彼の見せ場はない。さらには、ヒロインの白石麻衣。彼女は役者としてはまだまだ素人なので彼女の演技に期待するわけにはいかないし、仕方ないけど、なんだか可哀そうだ。それにしても、男優陣ふたりにどうしてこんなことをさせたのか。Jホラーの旗手として一世を風靡した中田秀夫は、その才能を枯渇させたのだろうか。ここ最近の彼の低迷ぶりは異常だ。
今回のお話は明らかに『羊たちの沈黙』なのだけど、ここまで怖さのない映画にしてしまったのは、なぜか。緊張感なんてどこにもない。ただただ、間抜けで、あきれるばかりの展開。何もなくてもこわいという映画をこれまで作り続けてきた中田監督は、どこにもいない。
役者たち全員にバカバカしいオーバーアクトを強要したので、成田凌の目をむいて狂気を表現した怪演は目立たない。それにしても何から何まで杜撰すぎた。だからラストのどんでん返しも、どうでもいいよ、というしかない。驚きにはならない。これは別の意味でとんでもない「驚き」に満ちた2時間である。
だいたいヒロインはスマホを落としてない。作ってからそこに気づいたのか、ラストで取ってつけたように、確かにスマホを落としたよ、というオチを追加するのも、無残。笑うしかない。