またぞろ、このパターンの映画か、といささか食傷気味。『超高速参勤交代 リターンズ』くらいでとどめておけばいいものを、あの手この手でこういう変種の時代劇を連打する松竹映画は、これこそが金鉱だとでも思ったのか。
だがそれにしてもこの映画は地味すぎる。こんなにも地味な映画で2時間、大丈夫か、心配になるような展開だ。図書館で毎日、本を読んでいるだけの生活をする書庫番の男が引っ越し奉行を任される。理不尽な要求を突きつけられて、頭を抱えるのだが・・・
星野源が主役で、その奉行を演じる。似合わない。まぁ、そこがいいのだけれど。彼に時代劇は似合わないけど、そのミスマッチぶりがなんとも面白いのだ。イヤミがなく、とても自然体で目立たない男を演じる。そんな彼が重大な用件を仰せつかって奮闘する、という映画だけど、でも、彼自身は何もしない。周りが、助けてくれるだけ。気がつけばなんとかなっていく、というお気楽なストーリーだ。確かにそれなりには面白い。だけど、それだけで2時間は長い。そこここにそれなりの仕掛けを用意はしているのだけど、やはり全体的には単調になる。ラストでは言い訳程度のチャンバラシーンもあるにはあるけど、あまり意味はない。犬童一心監督は、時代劇なら以前に『のぼうの城』を作っているけど、これはあれとよく似たタイプの映画で、今回も確かに上手く作りはしている。でも、なんだかなぁ、である。
そんなこんなで、これはこれで、こんな小さなお話でも僕はいいのだが、会社(松竹ね)としては、時代劇だし、それなりの予算もかかっているから、ヒットしなくてはならないはず。でも、やっぱりこれでは地味すぎて無理。僕は見ながら、このほのぼのとしたところが気に入ったのだけど、欲求不満が残った人も多数いたことだろう。たぶん、あまり観客動員は見込めない。
最後に、もう少し。
僕がこの映画から学んだことは、引っ越しをするのには物を半分くらい棄てなくてはならない、というところ。そこが一番。物が溢れる家の中をなんとかして整理したいと思っているので、そういう断捨離を描くエピソードが気にいった。まぁ、映画の本筋とはあまり関係ないのだけれども。