バーチャルな世界で冒険を楽しみながら、そこに自分が生きる意味を見出すための目標をみつけていく。『西遊記』のキャラクターになり現実の砂漠を旅するというこの体験型システムはなんだか古くさい。ゲームの世界に入って冒険するなんていうネタはもうずいぶん昔にはやった今では「古典的なもの」だ。それを敢えて今頃やろうとした意図はどこにあるのか。まずそこから説明してもらいたい。システムは完璧なはずだった。なのに綻びが生じてくる、というのも使い古された手だ。
しかも、この内容で2時間10分以上というのはさすがに長い。もうすこしコンパクトにまとめてもよかったはずだ。さらには、最初の方でネタがばれてしまうから、そこからどう新しい展開をみせるのかと期待したのだが、その後も同じことの繰り返しだ。なかなか話は先には進まない。
天竺を目指して砂漠を旅していたのに、なぜかここは南極であるという部分もわかりにくい。そのことがいったいどういう意味を持つのかの説明はなされない。彼らを隔離するためなら別に南極くんだりまでやってくる必要はない。
ランダムに組み立てられた話はストーリーラインを追ってくれないから、いつまでたっても先にいかないで、停滞したままだ。それは意図的な行為なのだが、停滞が意味するものが描けない。だから、それが作品の力になるわけでもない。と、ここまで書いてきて僕はこの作品を批判しているようだが、そうではない。だが、批判的な物言いはまだまだ続く。
お話が終わった後のさらなるワンシークエンスを岩橋さんはどうしてもやりたかったようだが、いらない。作り手の気持ちはわかるが、死んでしまった者たちが、それでもまだ西を目指すという終わり方でも十分に納得はいく。そんなことよりもこのシステムがどうして機能しなくなったのかについてのほうが気になる。そこから見えてくる姉と弟の関係についての掘り下げが欲しい。
さらには彼女が作り上げたここにはいないはずの夫の存在。弟が作ったもうひとりの自分との関係も含めて、彼らの問題をきちんと描くことで、この芝居はかなりおもしろいものになったはずだ。現実の世界における夫婦のやりとり。それに対する弟の気持ち。そこがこの芝居を動かしていく原動力なのだ。そこからシステムエラーがどうして生じたのか、というドラマの方へとスライドさせたほうがよかったのではないか。
そんなふうに考えていくと、芝居は結局は人と人との関係を描くことになるのだが、ストーリーの仕掛けよりもそっちのほうがずっとおもしろいはずだ。さらには、外枠に配したこの研究に携わるイシザワを巡るサトウとアズマの三角関係の方も、もっとドロドロに関係を描いてもよかった。
岩橋さんが目指すところはもう冒険物語ではなく、純文学の域にさしかかっている。ためらうことはない。思う存分にやって欲しい。
しかも、この内容で2時間10分以上というのはさすがに長い。もうすこしコンパクトにまとめてもよかったはずだ。さらには、最初の方でネタがばれてしまうから、そこからどう新しい展開をみせるのかと期待したのだが、その後も同じことの繰り返しだ。なかなか話は先には進まない。
天竺を目指して砂漠を旅していたのに、なぜかここは南極であるという部分もわかりにくい。そのことがいったいどういう意味を持つのかの説明はなされない。彼らを隔離するためなら別に南極くんだりまでやってくる必要はない。
ランダムに組み立てられた話はストーリーラインを追ってくれないから、いつまでたっても先にいかないで、停滞したままだ。それは意図的な行為なのだが、停滞が意味するものが描けない。だから、それが作品の力になるわけでもない。と、ここまで書いてきて僕はこの作品を批判しているようだが、そうではない。だが、批判的な物言いはまだまだ続く。
お話が終わった後のさらなるワンシークエンスを岩橋さんはどうしてもやりたかったようだが、いらない。作り手の気持ちはわかるが、死んでしまった者たちが、それでもまだ西を目指すという終わり方でも十分に納得はいく。そんなことよりもこのシステムがどうして機能しなくなったのかについてのほうが気になる。そこから見えてくる姉と弟の関係についての掘り下げが欲しい。
さらには彼女が作り上げたここにはいないはずの夫の存在。弟が作ったもうひとりの自分との関係も含めて、彼らの問題をきちんと描くことで、この芝居はかなりおもしろいものになったはずだ。現実の世界における夫婦のやりとり。それに対する弟の気持ち。そこがこの芝居を動かしていく原動力なのだ。そこからシステムエラーがどうして生じたのか、というドラマの方へとスライドさせたほうがよかったのではないか。
そんなふうに考えていくと、芝居は結局は人と人との関係を描くことになるのだが、ストーリーの仕掛けよりもそっちのほうがずっとおもしろいはずだ。さらには、外枠に配したこの研究に携わるイシザワを巡るサトウとアズマの三角関係の方も、もっとドロドロに関係を描いてもよかった。
岩橋さんが目指すところはもう冒険物語ではなく、純文学の域にさしかかっている。ためらうことはない。思う存分にやって欲しい。