習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

川上弘美『椰子、椰子』

2007-12-01 10:16:47 | その他
 授業で漱石の『夢十夜』を高校1年生に読ませている。これって、もう少し大人対象だと思う。漱石の理屈を楽しめるくらいでなくては、このストーリーだけを追っても面白くないだろう。しかたなく、その理屈を説明したりするのだが、やっぱりやっていて僕が面白くない。分かってないな、というのが伝わってくるからだ。教科書は1、6夜が取り上げられている。このふたつより、やはり3,10夜だろう、と思いプリントにして配ってみる。あのインパクトのある話は奴らがどう受け止めてくれるのか、ワクワクする。だけど、なんか全く反応がない。「ブタになめられますが、よござんすか」に興奮しないのだ。おかしいと思った。だけど、日々刺激の強いものを見ている子どもたちには、この繊細なホラーは、ピンとこないのかもしれない。なんだか、がっかりする。

 しかたがないから、自分を慰めるために川上弘美の『椰子、椰子』を久しぶりに読んでみた。とても、おもしろい。ここまで面白かったなら納得がいく。何に納得がいったのだかはよく分からないが、夢の話を授業でするなんて、そのこと自体が駄目なんだよ、という当然のことに対してだろな。

 でも、漱石なら、教えられるかも、なんて思っちゃったのだろうな。川上弘美のこのへんてこな夢なら、だれも教科書には載せまい。こんなもの、学んで分かるものではない。自分で感じろ、と思う。いやはや、感じることすら意味ないかも。ふふん、と笑ったらいい。

 文庫版は初めて読んだが、『ぺたぺたさん』という短編が追加収録されている。と言っても、4ページくらいなので、それほど徳した気分はないけど。つげ義春の夢日記とか、それを漫画化した作品とかが、昔とても好きだったけど、今は川上弘美のさらっとしていて、あっけらかんとしたものが好き。『蛇を踏む』の頃から彼女はずっとこんな感じだ。山口マオのイラストもいい。

 余談だが、最近よく夢を見る。眠りが浅いからかなぁ。でも、僕の見るへんてこな夢は、なんだかとてもわかりやすくってつまらない。人間としてのレベルが違うのだろうか。情けない。

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