習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『さよなら。いつかわかること』

2009-03-04 20:22:37 | 映画
 『チェンジリング』を見たから、というわけではないが、続いてイーストウッド関連の映画をもう1本見た。この映画の音楽を彼が担当した。自作以外で音楽監督をすることはなかったらしい。題材がいかにもイーストウッドらしい。若い監督(ジェームス・C・ストラウス)の作品を応援する意味でも、彼がこの作品に関わった意味は大きい。

 軍人を妻に持った男(ジョン・キューザック)が、イラクでの妻の戦死という事実を幼い子どもたちに伝えるため、以前家族で行った思い出の遊園地へと旅に出る、という話。とても小さな映画だ。『チェンジリング』のようにこの映画も必要以上の説明はしない。ただ事実を見せるばかりだ。

 主人公である夫も、もともとは軍人で、軍隊で彼女と出会い結婚した。しかし、彼は視力を偽って入隊したため、それがばれて除籍させる。今はホームセンターで働いている。なぜ、嘘をついてまで入隊したかったのか。そして、今の生活は彼にとってどんなものなのか。まるでそれが描かれない。妻との関係も、子供たちに対する彼のスタンスも、わかりにくい。もちろん描かれた部分からある程度の推測はつく。しかし、そこまでだ。

 本題である2人の子供たちとの旅にしても、その中で彼は子供たちに何ひとつ言わない。母親が戦死したことを伝えるための旅なのだが、伝えることはもちろんそれだけではない。心の中にしまった思いは一切言葉にはならない。だが、この旅が大切なものであることは子供たちにも薄々はわかる。学校を休んで、いきなり旅に出ようだなんていう父をおかしいと思えるくらいには、(幼いながらも)2人とも大人である。だから、自分から何も言わない。父が話さない以上彼女たちからは何も言えない。

 ジョン・キューザックが増量してかなり肥満体になり登場するのだが、あそこまで太る必要があったのだろうか。彼が肥満体である必要性はない。敢えてあんな体にすることで描きたかったことって何なんだろうか、よくはわからない。

 とてもいい映画なのはわかる。だが、あまりに説明不足で、見終えてなんだか落ち着かない気分にさせられる。イーストウッドの叙情的な音楽が耳に残る。

 

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