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映画・演劇のレビュー

『サマー・テール(夏天的尾巴)』

2009-09-13 18:20:10 | 映画
 パッケージの英語タイトルは『サマーズ・テール』なのだが、日本語タイトルを付けるならば、『サマー・テール』となるのではないか。と、いうことで勝手にそういうこととした。テールではなく、テイルなのかもしれないが、まぁ、細かいことは気にしない。『夏の終わり』とか、『夏のしっぽ』なんてのもありだろうが。

 これは一昨年台湾で公開された青春映画だ。日本では残念ながら未公開。目に鮮やかな台南の田園風景を舞台にして、4人の高校生の青春群像がさわやかに描き出される。主人公の少女が自転車を疾走させるシーンが全編を彩る。

 彼女は心臓が悪い。なのに、全力で自転車を走らせ、学校に行き、音楽祭のステージに立つ。そして、演奏の途中で倒れてしまう。病院に運び込まれ、そこから難病もののなるのか、と思ったが、そうはならない。彼女の病気は映画のメーンストーリーではなく、数あるエピソードのひとつでしかない。

 彼女が好きな男の子は担任の女先生と付き合っている(ようだ。よくわからないが)。映画はこの2人を中心にして、いつも一緒に居る親友の女の子や、日本から来たサッカー好きの男の子(朗! みんなが「アキラ」と呼ぶ声が耳に残るから名前を覚えてる)とのエピソードが羅列されていく。これは彼ら4人の姿を追いかけたひと夏の物語だ。エピソードはありきたりで、たわいない。退学になったり、けっこうシビアだが、全体的な印象はほのぼのしている。字幕なしで見てるから微妙なニュアンスまでは伝わらないが、彼らが話してることはなんとなくなら、わかる。

 まぁ、正直言うとたいした映画ではない。明るく、楽しく、さわやかだ。それだけ。こういうどうでもいい映画だから、日本では公開されないのだが、ではつまらないか、というとそうではない。それどころか、見ていてなんだか気持がいい。瑞々しい映画なのだ。抑えたタッチで目に鮮やかな青春を敢えてありきたりに見えるように見せる。この作者はなかなかしたたかで、実は確信犯だ。暗い話スレスレの話なのに、それをここまで明るいタッチで見せる。田んぼの緑を強調し、その広々とした空間を自転車で走り抜ける。4人の秘密基地となるコンテナ倉庫は『女の子ものがたり』の3人が集まる倉庫と同じだ。ありきたりを装った青春ド真ん中の映画はなんだか懐かしい。今時の映画にない素直さがいい。

 

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