習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

ショウダウン『メビウス』

2012-06-26 22:23:02 | 演劇
 前作『月下人魚』がとてもよかったから、続いてこんなにも早く新作が見られてうれしい。しかも、同じ船場サザンシアターだ。この小空間を見事に生かした1人芝居だった前作に続く本作は、なんと2人芝居だ。ひとりから、ふたりへ。その小さな前進もうれしい。欲張るのではなく、身の丈に合わせた芝居を作ろうとする姿勢がいい。もちろん、今まで大人数の大がかりな作品も多数作ってきたのだろうが、今は、こういう小さな芝居を目指す。それって実はとても贅沢な話だ。人に気を遣うのではなく、自分が一番やりたいことを、自分のやり方で見せようとする。作、演出のナツメクニオさんの心意気がちゃんと伝わってくる会心の作品だ。

 廃棄されて、見棄てられた2体のロボットが、最後に見る夢。2人は時空を超えて何度も巡り会う。1本の花を手渡すことで、時代と人がくるくると変わっていく。めまぐるしい展開は、一瞬が永遠になる、いくつもの人と人との出会いと別れのドラマをそこに見せる。1本のストーリーというよりも、いくつものエピソードのコラージュのような作品だ。どこかに着地するのではなく、ただ最初の地点に戻ってくるだけの、お話。でも、ちゃんと2人に戻ってきたとき、とてもほっとする。ラストは死を待つばかりの2体のロボットに還る。それでいい。

 ありきたりと、いえば、まぁ、とてもありきたりの話でしかない。でも、心地よくこの予定調和を見せるというのも、大切なことなのだ。90分の至福が確かにここにはある。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 林英世ひとり語り『雨あがる』 | トップ | 『ホタルノヒカリ』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。