シリーズ第3作。またか、と思いつつも、テンションが上がる。最初に『ランチのアッコちゃん』を読んだ時の感動は今でも僕の心に深く刻まれている。それくらいに衝撃的な感動だったのだ。
そうかぁ、と目から鱗、だった。こういう生き方が出来たなら人生は素敵なものになる。そこまで思った。あのささやかな本がそこまで思わせるほど、元気を与えてくれたのだ。「もっとアッコちゃんから指導されたい」と主人公の三智子でなくても、いや誰もが、そう思う。それくらい画期的ですばらしい。彼女のバイタリティが欲しいとみんな思う。
「読むと元気になる小説」なんていう嘘くさいキャッチフレーズが、まさに的を射る。でも、さすがに3冊目である。もう息切れしてもおかしくないし、ルーティーンワークに陥る可能性もある。しかし、である。なんと2度あることはちゃんと3度もある! やられた、と思った。最初はワンパターンだなぁ、と思いつつ、だが、ツボに嵌る。アッコちゃんのペースに飲み込まれているのだ。それはもちろん柚木麻子のペースなのだが。
この巻込まれ型のストーリー作りの上手さはこれまでもそうだったはずなのに、今回もまんまとやられる。しかも今回は4話ともちゃんとアッコちゃんが登場するという大判振る舞い。(過去2作ではワンエピソードは彼女の出ない話が挿入されていた。それに1冊が3話構成だった気がする。)
忘年会の幹事の仕方、悪意を持つマスコミ(というか、記者)への対応、少ない時間の有効な使い方。最後はお祭りをどう楽しむか。4話とも、実に様々なアプローチで新鮮。例によって、ウィークデーの5日間で解決。
いろんなことがそう簡単には解決しない。そんなこと、わかっている。でも、彼女の前では不可能が簡単に可能になる、ようにみえる。でもこれは単純なメルヘンではない。明日からでも生かせれる。だから、みんなこれを読むと元気になるのだ。
最後まで読んだ時、これがシリーズの完結編なのだ、とわかる。また、と最初は思ったくせに、もう読めないとなると、寂しい。でも、もしかしたら、数年後、また新作が書かれるかもしれない。大傑作『ナイルパーチの女子会』を読んだ今なら、彼女の才能は無限大だと信じられるからだ。