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映画・演劇のレビュー

『アナと雪の女王』

2014-03-18 21:51:29 | 映画
 ディズニーのアニメーション映画最新作。アメリカでアニメ映画史上空前絶後の大ヒットを記録した。なぜ、この映画がそんなにもアメリカ人を熱狂させたのか。それは、見ればわかる。こう来たか、と感心させられた。ディズニー史上初のダブル・ヒロインなんていうことまでが、宣伝の目玉になっているが、主人公を2人設定したことで、お話に奥行きが出来たのも事実だろう。2人を対照的に捉えるのではなく、両者の融合によって、生まれる感動がクライマックスに用意される。実に心憎い構成だ。

 生まれながら魔法が使えることが、彼女を苦しめる。すべてを凍らせることができる。でも、そんな自分の能力を抑えることが出来ない。その結果、妹を傷つけるという事故を起こす。やがて、両親が死んだあと、部屋にこもり、身の処し方を考える。この国を何とかして、うまく治めたい。そのためには魔法は隠さなくてはならない。そんな姉の孤独と同様、また別の意味で妹もまた孤独だ。なぜ姉が部屋にこもったまま出てきてくれないのか、わからないまま、歳月を過ごすことになる。幼い頃、あんなにやさしかった姉が、自分とはもう一緒にいない。やがて、ふたりは成長する。大人になった姉の戴冠式の日に、よくやく彼女は姿を現すことになる。閉ざされていた城の門も開かれて、もう一度、昔のような幸せが戻ってくると、思う。

 だが、幸せな時間は一瞬で終わりを告げる。話の展開は早い。この映画の本番は実はここからなのだ。要するにここまでは導入でしかないのだが、ものすごくいいテンポでここまでが語られる。しかも、ここから先の本番もまた、アップテンポなのだ。雪と氷の世界となった国を救い、姉をもう一度、取り戻すための冒険が始まる。(いつまでたっても、まるで話が進まない『ホビット』は、この映画の爪の垢でも煎じて飲んで欲しい。)

 この映画のよさは、テンポよく話を展開しながらも、単純なお話で、わかりやすいところにある。でも、いろんなことを考えさせるし、簡単ではないのだ。ちゃんと奥行きもある映画なのである。特にオチの部分にすごいひねりがある。そうきたか、と驚いた。今の時代、王子様のキスで魔法が溶けたりはしない。では、何が大切なのか。それは映画を見て、自分の目で確かめて欲しい。主人公はアナのように見せかけて、実はエルサのほうである。もちろん、2人のどちらにも感情移入できるように作られてある。さらには、どちらが、いいとか、わるいとか、そんな問題にもならない。これは本当によく出来た傑作だ。


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