小川洋子、クラフト・エヴィング商會『注文の多い注文書』
なんて素敵な小説だろう。表紙の写真を見たときから、これは大丈夫、と思った。でも、そんな期待以上にこれはとても素敵な作品で、こういう仕掛けがなんともうれしい。よく出来た作品集だ。5つの注文書と、納品書。受領書までついている。小川洋子が5つの小説を仲介して、5人の依頼者の注文書を提示する。みんながみんな、なんだかもやもやしたものを抱えていて、だから、ここにやってくる。クラフト・エヴィング商會は、それぞれの難しい依頼に対して誠実に応える。この世にはないものを探して下さい、という依頼者の懇願に対して、ちゃんとそれを探し出すのだ。
彼らが見つけてきた品を、ちゃんと写真で見せてくれるのもいい。信じないわけではない。でも、それがあると、なんだか安心する。ほんとうにあったのだ、と。「ないもの、あります」という看板はクラフト・エヴィング商會のありかたをちゃんと示している。ここはそんなお店で、だから、みんな信用して依頼できる。
それぞれのエピソードには依頼のきっかけとなる小説(川端康成にサリンジャー、村上春樹にボリス・ヴィアン、内田百まで)が仕込まれてあり、それぞれの話を依頼の中に取り込みながら、依頼者のそれぞれの事情が語られる。これは一粒で何度も楽しめる小説になっている。
というか、これは本当に小説なのだろうか。まるでガラス工芸のように、繊細で美しい。この本自体がアートなのだ。小川洋子の書く依頼を受けてクラフト・エヴィング商會による答えとなる小説もまた、刺激的だ。しかもちゃんと現物の写真を添えてある。この両者によるコラボレーションはまるで、示し合わせたように見事に符合する。最後の解説まで含めて、完璧に組み立てられた作品である。
なんて素敵な小説だろう。表紙の写真を見たときから、これは大丈夫、と思った。でも、そんな期待以上にこれはとても素敵な作品で、こういう仕掛けがなんともうれしい。よく出来た作品集だ。5つの注文書と、納品書。受領書までついている。小川洋子が5つの小説を仲介して、5人の依頼者の注文書を提示する。みんながみんな、なんだかもやもやしたものを抱えていて、だから、ここにやってくる。クラフト・エヴィング商會は、それぞれの難しい依頼に対して誠実に応える。この世にはないものを探して下さい、という依頼者の懇願に対して、ちゃんとそれを探し出すのだ。
彼らが見つけてきた品を、ちゃんと写真で見せてくれるのもいい。信じないわけではない。でも、それがあると、なんだか安心する。ほんとうにあったのだ、と。「ないもの、あります」という看板はクラフト・エヴィング商會のありかたをちゃんと示している。ここはそんなお店で、だから、みんな信用して依頼できる。
それぞれのエピソードには依頼のきっかけとなる小説(川端康成にサリンジャー、村上春樹にボリス・ヴィアン、内田百まで)が仕込まれてあり、それぞれの話を依頼の中に取り込みながら、依頼者のそれぞれの事情が語られる。これは一粒で何度も楽しめる小説になっている。
というか、これは本当に小説なのだろうか。まるでガラス工芸のように、繊細で美しい。この本自体がアートなのだ。小川洋子の書く依頼を受けてクラフト・エヴィング商會による答えとなる小説もまた、刺激的だ。しかもちゃんと現物の写真を添えてある。この両者によるコラボレーションはまるで、示し合わせたように見事に符合する。最後の解説まで含めて、完璧に組み立てられた作品である。