このとんでもないタイトルと、あのポスターの写真、図柄。それだけでこの映画を見てもいいかも、と思った。知らない人(監督も主演も無名の人。というか、僕が知らないだけだが)が作った映画で、「ボクシングもの」とかあまり好きじゃないけど、この圧倒的なインパクト。そして、ダサい。
昔こんな映画があったな、と思う。そうだ、これは『どついたるねん』に似ている。同じように「ボクシングもの」で、顔のアップのポスター。知らない監督、主演。(もちろん、あの映画は今では誰もが知る阪本順治監督、赤井英和主演のレジェンドだ! でも、公開時は今の日本を代表することになる監督のデビュー作になるなんて誰も知らなかった。もちろん、僕もだ。)
そんなこんなで、恐々だけど、映画館に足を運ぶ。やはり、とんでもない映画だった。いい意味でもわるい意味でも、である。僕はこの映画を評価しない。でも、この迫力と、ありえないような展開には驚きあきれさせられた。そこを過大評価する人がいてもおかしくない。それは好き嫌いの問題だから。たしかにこれはめちゃくちゃだけど悪い映画ではない。
ボクシングしかしてこなかった男が、ボクサーを引退する。人生が終わる。真っ白に燃え尽きたなら、『あしたのジョー』のように、そこでエンドだ。でも、そうはいかないし、燃え尽きてもいない。トレーナーに「もっとやりたい」と訴えかける。でも、体はボロボロで、ドクターストップがかかっている。それに試合をしても勝てないし。そんな男のその後の人生が描かれる。
再就職(というか、初めての就職ね)は当然うまくいかない。一生懸命だが、要領が悪い。幼なじみの恋人と結婚もするが、そんなだからうまくいかない。自分にはボクシングしかないと、改めて思う。さぁ、そこからどういう展開で「生きててよかった」となるのか。
だが、ここからが「もうそれはないだろ。」という展開になる。地下格闘技の世界に入り、再び戦う、というだけでも、「なんだかなぁ、」と思うけど、それを最終的に親友や、妻(離婚しているから元妻だけど)までもが認めるのだ。ラストは、なんと彼らが大好きだった『ロッキー』である。いや、いや、それで「生きててよかった」というのはあんまりではないか、と僕は思う。細部も含めていろんなところが無茶している。突っ込みどころは満載なのに、動じない。堂々と生きててよかったとのたまう。
確かに格闘シーンは凄い。だけど、お話が別の意味で凄すぎた。昨年のボクシング映画の傑作『ブルー』と比較する気はないけど、こんな破天荒な映画をシリアスに作る、なんていうのもありないか、と驚いた。