今絶好調の内田英治監督作品。続々と新作が公開される。しかもオリジナル台本でさまざまなタイプに挑戦するのは凄い。ただ結果はまるで出ていない。プログラムピクチャーなんてもうないから、数だけ作ってもダメだろう。それなりの映画でもダメだろう。
未だ代表作と言える映画はない。評判がよかった『ミッドナイトスワン』も傑作とは言い難い。 さて、今回はなんと恋愛映画である。
浜辺美波と山田涼介が主演して、声を失くした青年と視力を失った音大生の話。ベタな設定の少女漫画で昔ならただのアイドル映画。70年代の山口百恵と三浦友和が主演する映画みたいな内容。(そう言えばふたりの映画で『ホワイトラブ』ってタイトルの映画もありました)まぁ今時あり得ないタイプの映画である。
そしてそんなこんなの映画だが、パッケージング以上にまさかのあり得ない内容で、衝撃的だった。よくもまぁこんないいかげんな台本で企画が通ったものだ。リアリティゼロなのは許すが、バカバカしくて話についていけないのは勘弁して欲しい。説得力がまるでない絵空事で醒めてしまうばかりだ。映画なんだからせめて見ている間くらいは夢を見せて欲しい。美男美女の切ない恋愛映画で充分なのだから。
設定の嘘くささにもウンザリだが、それを展開していく過程でさらにあり得ない嘘ばかり。あげくはまさかの三角関係。セリフなしの山田涼介はまるでいいところなしで、久しぶりの野村周平もあんな役を振られて可哀想。ラストシーンは噴飯物のキスシーン。あんなところでキスしないでください。見ていてこっちが恥ずかしい。
貧乏人の青年と金持ちのお嬢さんの恋なんて、今時そんな時代錯誤の映画を作りますか。しかもお嬢さんはピアニストの夢を交通事故で一度は絶たれたけど、最後にはその夢を実現するとか。これは『チャップリンの街の灯』かい、と思うような展開もある。目が見えない彼女を助けるとか。お話にもツッコミどころは満載。