昨年最初に見た芝居がこの無名劇団の芝居だった。ミステリタッチでストレートな作品で好感が持てた。そして、今年もまた、1月に彼女たちの作品を見ることになった。夏の『無名稿 あまがさ』も含めて毎回全然タッチが違う作品を見せてくれるのもうれしい。
今回はクリスマス・イヴの夜のできごと。4つのお話が並行する。少し季節外れになってしまったけど、よくあるトレンディ・ドラマのような(言い回しがなんとも、古いなぁ)設定のオムニバスストーリー。
バイトでサンタの恰好をして、街頭に立つ女性と、学校で飼われていた金魚をもらってきたのに、母親からそれを鉢ごと棄ててくるように言われた少年のお話。両親がなかよくデートに出かけてしまって、取り残された3姉妹弟のお話。観覧車に乗る恋人たちの別れ話。会社のクリスマスイベントでPerfumeをやらされる新人社員の4人の女性の練習風景を描くお話。
ひとつひとつはたわいないお話だけど、とても丁寧に作られてあるので好感が持てる。そうなのだ、彼女たちの作品のよさはそこに尽きる。だが、それが同時に弱点にもなっている。これだけではインパクトが弱いのである。そこを補うため場面転換にダンスパ・フォーマンスを用意したりしているのだが、それだけではダメだ。1本の芝居として訴えかけてくるものが欲しい。せっかくの75分という上演時間が生きないのである。コンパクトに上手くまとまっていて、でも、ほろ苦いものが残る小品、というコンセプトに留まっていては物足りない。
それぞれの抱える寂しさや傷み、それがほんの少しの時間や他者との交流を通して、異化していく。そんなささやかな美しさや喜びが、特別な日の、その同じ日の、別の場所での出来事を並べることで見えてくる「何か」として伝わればよかったのだが。
6年間付き合った彼氏に別れを告げる女の気持ちや、母親に自分の気持ちを伝えなくてはと思う少年の想い。そこに、無邪気な3姉妹弟が晩御飯の心配をする話と、新人社員4人組の話を加えるというバランス感覚は抜群なのだ。意図通りだと思う。なのにそれが結果的に物足りなさになるのが、なんとも残念だ。
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