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映画・演劇のレビュー

劇団未来『あゝウエディングドレス』

2007-07-04 22:43:11 | 演劇
 こういうタイプの芝居を見ることはめったにない。今回も春演の審査員をさせてもらわなければ100%見ることがなかった芝居だ。これはこれで見れてよかったと思う。こういうタイプの芝居を拒否するのは簡単だが、受け入れてみることで、見えてくるものもある。

 真摯に芝居と向き合い、芝居を通して世界を変えていけたらと願う。その姿勢には感動した。すぐに斜に構えて、物事をしっかり見ようとしない今の若い人たちに、こんなにも誠実に芝居を通して、世の中を見つめている人たちがいる、ということを伝えたい、なんて気分にさせられるほど真面目な芝居である。

 20年前に初演された作品を今回の劇団創立45周年作品として上演する。主人公を演じる3人の役者が、ちょうど役の設定と同じ年齢に達したことも要因らしいが、その設定が60代半ばとは、凄い。もちろん3人とも初演と同じキャストらしい。さすが老舗劇団だ。時代をバブル崩壊後の92年に設定しなおしてあるのも賢明な判断だろう。2007年の話として見せるにはちょっと無理があるし、87年とするのも今考えると少し不自然。上手い変更だ。

 芝居自体は、全体的にテンポが遅く、暗転も、ものすごくゆっくりで、少し眠くなる。ただ、何10年も芝居を続け老境に達した今も、自分たちの信じた芝居を自信を持って作り続けるという姿勢は素晴らしい。確実に芝居は古いし、今のニーズには合わない部分も多々ある。しかし、それが何だというのだ。世の中にあわせて芝居を作るのではない。自分たちが信じる芝居を世の中に向けて問いかけていくのである。それでいいと思う。

 ウエディングドレスを着ることができなかった世代の女たち。男たちを戦争に取られ、シングルのまま戦後50年を生き抜いて、今老境を迎えた女たち。彼女たちの孤独と力強さがよくでている。価値観がどんどん変わっていくこの時代の中で、それでも自分を見失わず生きていくこと。それはとても大事なことだと思う。この芝居が問いかけることを真摯に受け止めたい。

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