習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『プール』

2010-09-22 22:57:21 | 映画
 この映画の監督は萩阪直子ではない。偽萩阪である。大森美香だ。なんで、ここまで似せる必要があるのか。いや、作り手にはそんな意図はないのかもしれない。ただ、よく似たキャスティング、よく似た設定で、よく似たドラマを作っただけで、他意はないのかもしれない。というか、それだけ揃えば、やはりただのパチモンではないか。

 でも、監督はただのパチ監督ではない。あの有名なTV脚本家である。それなりの実績もある。彼女の監督第2作だ。しかも今回は前作『ネコナデ』とは違い脚本も自前だ。満を持しての大勝負ではないか。なのに、どうして、こんなパチ映画を作るのか。よく解らない。彼女には作家としてのプライドはないのか。普通ならここまでの猿まねなんか恥ずかしくて出来ないはずだ。

 ちょっと言い過ぎました。ごめんなさい。そこまで言うつもりはない。ただ、驚いただけなのだ。今、小林聡美ともたいまさこをセットにするのは、樹木希林と岸本加代子をセットにする(その例えは、いくら何でも古すぎるよ!)以上に強烈である。そこにはある種のイメージが出来てしまう。それを突き崩すのは困難だ。でもそれに迎合するのはなんとも安易すぎる。では、大森美香はどんな挑戦をしたのか。

 結果は、何もしていない、というつまらないこととなった。えっ! って感じだ。

 タイのとある村。そこで暮らす小林。広い屋敷にはプールもある。ゲストハウスかなんかをやっているみたいなのだが、客は誰も居ない。そこには加瀬亮と、もたいまさこもいる。日本から小林の娘がやってくる。何もない時間が流れる。穏やかで心地のよい時間だ。やがて、娘は帰っていく。また依然と同じような時間が流れる。

 極端にセリフがない映画だ。ドラマを形作るような話もない。母と子の確執は少しある。だが、そこを中心にしたドラマは作らない。魂の休暇を描こうとするのだ。それは荻阪監督と同じアプローチである。それを大森美香バージョンで見せる。少し彼女の方がドライだ。TVで散々説明セリフだらけで、嘘くさいドラマドラマしたものばかりを作っていると、たまにはこういうものも作りたくなるのだろうか。でも、なんかそんな個人的なリハビリを映画にして欲しくはない。


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