ふつうならこの組み合わせの映画が超大作として宣伝されないはずがない。ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツの共演である。ハリウッドを代表するビッグスター夢の共演と言うだけで話題性抜群。宣伝はそこを押し出すだけで、多数の観客をつかんだ、のはもう20年以上昔の話だ。今、そんなことでは話題にならない。映画界にとって、嫌な時代になったものだ。
これはハリウッドが威信をかけて贈る社会派アクション映画なのだが、劇場は予想通りガラガラで、公開初日の土曜日なのに、ゆったりと見れる。とても面白い映画だし、ハラハラドキドキさせられる。これで98分というスピーディな展開で、ちゃんと感動もある。
監督はなんとジョディ・フォスター。彼女がこんな娯楽活劇を作るなんて、少し驚き。コンパクトな映画だけど、大作仕立てで、ちゃんと重量感もある。昔ならシドニー・ルメットなんかが撮る映画だ。それを今はジョディーが撮る。なんだか、凄い時代になったものだ。俳優出身の女性監督という色眼鏡はいらない。堂々たる作品だ。
前半のTV局のスタジオ内での緊張感溢れるドラマから、後半ニューヨークの街に出ての緊迫するやりとりへと、たたみかけるようなドラマ作りは見事というしかない。ここには冗長なシーンは一切ない。だから98分になるのだ。
だが、なのに、見終えて少し物足りない気分になるのは、この映画には華がないからだ。ジュリア・ロバーツもジョージ・クルーニーもあんなに頑張って、スターである自分を抑えて映画の主人公になりきっている。だが、そこが、物足りなさになるという逆説。娯楽大作と社会派映画の秀作。そのはざまで、どっちつかずの映画になる。
そんなところもまた、今と言う時代のせいなのだ。この映画自体のことよりも、その背景となる時代のことをついつい考えてしまう。これはそんな映画だった。だから小粒な印象を与える。