前後編4時間40分に及ぶ大作だ。今回はまずその前編。膨大な原作をダイジェストしてみせるのではなく、ポイントを絞り込んだ。原作のほんわりしたファンタジー色は払拭して、リアルなドラマとして立ち上げる。ストーリーには変更はないから、お話は原作に忠実だ。しかし、原作以上にハードな映画になっている。
最初から最後まで将棋のシーンを網羅した。全編が戦いのドラマなのだ。将棋をアクションで見せるわけにはいかないし、そういう映画ではないから、表面的には静かな映画だ。しかし、これが戦いのドラマである以上、ただ静かなだけではない。静かだけど、熱いバトルが繰り広げられる。正直言って見ていて疲れる。息を抜く暇もない。戦いに次ぐ戦い。見るほうも演じるほうもお互いに消耗戦である。どんどんいろんな敵が主人公の前に立ちはだかる。神木隆之介が全身全霊で主人公の零を演じた。
大友啓史監督はあまり動きのない将棋の世界を、大仰にすることなく、でも確かなバトルとしてスクリーンに表現した。あっという間の2時間20分である。でも、見終えて時にはぐったりする。すごく力が入ったから、疲れた。
後編は愛のドラマらしい。全体を見終えた時、ちゃんと評価したい。今はまだ、何とも言い難い。