高校の演劇部の卒業公演をウイングフィールドで2日間3ステージ行う。実に大胆で刺激的な試みだ。しかも扱ったのが、マヌエル・プイグのこの作品である。3年生部員4名が中心になった。役者2名、音響、照明各1名。4人による総力戦だ。後輩たちの力を借りて、ではなく、自分たちだけの力で芝居を立ち上げようとする。
演出、主演の柴田純くんを中心にした4人の努力と、それを脚色、助演でサポートした顧問の萩原一哉先生の情熱がこの作品を成功させたのだろう。この大胆な企画を、地道な今までの活動の先に設定して、実現させた。
とても美しい作品になっている。難しい題材に挑み、高校生だから、という逃げ道を作らず、真正面からこの作品にぶつかる。できあがったものはその結晶である。90分間。観客たちは痛ましい彼らの愛のドラマと向き合う。客席を埋めた若い観客の中には、もしかしたら描かれる内容がよくわからないという人もいたかもしれない。でも、構わない。それでも伝えたいものは伝わる。妥協することなく、ふたりの男たちの魂の交流をみつめる。そこから見えてくるものはちゃんと伝わる。それでいい。