原題は『Powder Blue』。それがこんな邦題になってしまった。DVDスルーの作品だけど、これはなかなかの拾いものだった。4人のお話を並行させながら、それがどこかで重なり合い、すれ違い、やがて、ひとつの結末を迎える。もっと何かがあるのかと期待させるけど、なんだか肩透かしを食らう、だから、つまらない、という人もいるだろう。だけど、期待させといて、たわいないラストをしゃぁしゃぁと見せるというのは、もしかしたら大胆なのかも、とも思う。生と死を中心に据えたお堅い人間ドラマのように見せかけといて、その実はたわいない恋愛ものというスタンスもいい。
地味めのキャスティングだけど、なかなか渋い。なんとレイ・リオッタが主役なのである。宣材では葬儀屋役のエディ・レッドメインとストリッパー役のジェシカ・ビールを前面に出してはいる。一応はこのふたりのラブストーリーということになるけど、実は一番はレイ・リオッタだろう。
初老の男(もちろんレイ・リオッタ)が刑務所から出てくる。25年ぶりだ。彼は死んだ愛する女性の産んだ娘(これがジェシカ・ビールね)を訪ねる。この話がメインだ。隠し味はフォレスト・ウィテカー。ちょろちょろ出てくる。彼の恋人も事故で死んだ。生きる望みを失った彼は誰か(エディ・レッドメインもお願いされる)に殺して欲しいと訴えかける。お騒がせオヤジである。彼のエピソードがレイのお話に挟まれる。(まぁ、この4人は均等に描かれるのだけど。)
死を前面に押し出しながら、生きることをちゃんと描く。12月20日から25日までのお話。クリスマス・ストーリーだ。別々のエピソードとして描かれる4人のお話を通して、この町(LA)のかたすみで生きる人たちの姿を淡々とスケッチして見せるドキュメントが心地よい。運命に翻弄される人々の姿を描く、なんて大げさなことではないだろうけど、なんだか寂しいし、でも、幸せかも。そんな映画。
死んでしまう初老の男とその孫。二人は天国で一緒に過ごすなんていうほのぼのしたエピソードは普通やらん、けど。しかも彼らが死んだのに、恋人たちは幸せにパリに旅立つ。自殺願望のウイテカーは新しい恋を受け入れそうだし。なんだか暗い話のはずなのに、明るい。死んだ人も生きてる人もハッピークリスマス、って感じで。なんだかへんな感じなのだ。市井の人々の群像劇というよくあるパターンのスケッチで、シリアスな映画のはずなのに、たわいもない。なんだか不思議な感触で心に残る1篇だ。