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映画・演劇のレビュー

浪花グランンドロマン『人造都市』

2010-09-06 21:48:59 | 演劇
 なんと20周年である。毎年、毎年休むことなく1年に1回テントで芝居をすることを定例としてきた浪速グランドロマンが、今年もいつものようにテントをたてる。この「当たり前のように」コンスタントに作り続ける姿はある種の感動すら呼ぶ。これは凄いことなのだ。なのに、まるで凄いことのようには見せない。飄々とこなしているようにすら見える。そこが彼らの凄さだ。

 20年、マイペースで続けられるなんてほんとは奇跡だ。しかも、地道に努力して少しずつ成長していく。テントと劇場という、年に2本のペースを頑なに守り、今年で21年目。いつも新しいことに挑戦し、特別凄い芝居を作ることもなく、でも、いつも努力賞ならどこにも負けない。(ごめんなさい。なんかあんまり褒めてない!)

 今回はインターネットの仮想空間に挑む。ネット上の閉鎖された世界の中で、匿名の存在同士が、やがて、そこから現実の壁の中に突入していくまでが描かれる。まぁ、散々いろんなところで、試みられたパターンで、何をいまさら、と思わないでもないが、反対にここまで遅れて来たからこそ、意義がある、とでも言わんばかりのアナクロさがいい。作、演出のたまご☆まんは、慎重な人だ。流行に乗ったような安易な芝居は作らない。自分が納得して、理解した上で、それを取り上げる。

 前半の歌謡ショーのような展開には驚くが、オープニングのケイタイを失くした娘の首を絞める父親のエピソードがあるから、大丈夫だ。安っぽくて派手な見せ方は、やがてやってくる本来のお話への導入でしかない。おもいっきりはしゃいで、遊ぶ。トランプに見立てた住人たちと、管理者とのやりとりは、正直言うとありきたりだ。閉鎖された空間という設定も野外劇には似合わない。だが、そんなことはわかってやっている。ファンタジーの意匠(と衣装)を纏い、仮想空間の自分と向き合う。その果てに見えてくるものが描かれる。素材に対する距離感の取り方がベテランであるたまご☆まんらしい。混沌の中に自分を溺れささない。その結果いささか図式的になったのは否めないが、このバランス感覚は悪くはない。

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