『GANTZ』2部作を作った佐藤信介監督なので、きっとそれなりには楽しめる映画に仕上がっているはず、と思い見た。『GANTZ』の原作者による作品の映画化なのだが、結果的に、あの映画とは違ってこれは期待外れの作品になってしまった。なんだかとても残念だ。
佐藤建は前作『亜人』でもこういうバトル映画に挑んでいたが、前作同様映画自体が空回りして、見せ場がない。どちらも対戦シーンばかりが突出してお話自体がおざなりになっている。せっかく面白い素材を取り上げたのに、なぜこういうことになるのか。本広克行監督は『曇天に笑う』でも外していたが、佐藤信介までもがここまでハズレを作るなんて、驚きだ。
僕の目が狂い始めたのかもしれないが、それだけでゃなく、最近こういうSFXを駆使した大作映画に対してのハードルが高くなったのかもしれない。技術の進歩からどんな驚異のビジュアルを見せられても、もうなんとも思わなくなった。それは200億以上の巨費を投入したリック・ベッソン渾身の超大作『ヴァレリアン』を見た時にも感じたことだ。あの映画はアメリカ映画を見慣れた目にはテンポが遅く地味でストーリーがまだるっこしくて、途中で居眠りをしてしまったほどだが、派手なアクションであろうとも、お話の面白さがなければ単調になるばかりだということを証明している。
この映画も同じなのだ。なぜ、彼らがアンドロイドになったのか。それによって内面的にも彼らが変わっていく。その過程を追う事が面白いドラマを作ることになる、そのはずなのだが、それができてないのだ。彼らの内面には踏み込みきれず、安易にバトルばかりが繰り返されるから、だんだん退屈してくるのだ。
平凡なお父さん(木梨憲武)がヒーローになる、という単純なコンセプトだけでも充分に面白い映画を作れたはずなのに、彼の家庭が崩壊しているという背景を用意しながらも、そこを生かせない。対峙する高校生(これが佐藤建! いくらなんでも彼に高校生を演じさせるのは無理がある)が、悪に染まるというのも、ひねりがあって悪くないはずなのに、お話自体があまりに単純な展開でこちらにもガッカリさせられる。せっかく用意した設定が、書き割り然としたものにしかならないのが、まずい。これは台本の不備だろう。
さらには彼らの登場で世界が崩壊していくさまが描かれるはずなのに、警察やら政府があまりに無能で嘘くさくなる。無差別殺人が東京のど真ん中で起きているのに、その恐怖が伝わらない。せめてヨン・サンホ監督『ソウル・ステーション パンデミック』のような恐さが欲しい。