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映画・演劇のレビュー

『風暴 ファイヤー・ストーム』

2015-12-29 20:56:00 | 映画
何もここまでしなくてもいいんじゃないか。派手なアクション映画がどこまでもエスカレートしていく。際限ない。最初はこれはないわ、と思いつつ、笑っていたけど、だんだん笑いも引き攣る。作り手は究極のアクションを目指したのだろう。もう香港の街ごと破壊しかねない勢いだ。刑事アクションなのに、スーパーヒーローものの様相を呈してくる。アンディ・ラウは超人並み。啞然、驚愕。呆れるしかない。どこまでも派手にすれば、さらにはテンポよく早く早く見せれば、映画は面白くなる、というわけではない。

過剰は時に、映画を損ねることもある。アンディ・ラウはいつものようにどんな映画にも誠実に取り組む。このありえない過激アクション映画のセンターを担い、荒唐無稽にそれなりのリアリティーと風格を与える。彼がいるから、映画はギリギリのところでなんとか損なわれない。

だが、せっかくここまでやるのだから、それに見合うだけの成果を上げてもいいのではないか。史上最高の破壊ショーを見せても虚しいだけだ。当たり前のことだが、映画は呼吸が大事だ。このお話をどう見せるか。そのためのシナリオがいる。そして、そのお話を効果的にするための派手なアクションは大事だし、それが映画を(もちろん、観客を)興奮させる。物凄く頑張っているのだ。究極のバトル。水道管が爆発して、走る地下鉄が転倒して、駅は壊滅。道路は陥没。銃撃戦は街を大混乱に巻き込む。犯人はどこまでも爆破と殺戮を繰り返し。

犯人検挙のためには、何でもする。潜入捜査や闇取引。騙し合い。証拠隠滅。ダーティではなく、必死なのだ。24時間正義のために働く。いいのか、こんなことして。まぁ、そんな感じ。スピードが速すぎるから、人間関係がわかり抜くい。最初の5分で主な登場人物の関係性を説明するのだが、残念ながら、あれではわからない。終わってから、改めて見直して、こんなところに出ていたのか、とわかる。説明なしで、いろんなことが、どんどこ展開するし、忘れていた人物がいきなり出たり、大事な人物が途中で消えたり。杜撰というより、きっとてんこ盛りし過ぎて、消化しきれていない。ありえないような突込みどころも満載。1時間49分の映画にどうしてここまで、と思うくらい盛る。市街戦で戦争する刑事アクションって。

実に楽しかったし、感動的だが、過剰は時に、せっかくの努力を無にする。おなかいっぱいになり、ゲップが出た。笑うしかない。それに、それって、なんだか汚いよ。

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