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映画・演劇のレビュー

『アメージング・スパイダーマン』

2012-07-20 22:55:06 | 映画
 『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督が、この超大作の監督として抜擢されたのは驚きだ。あの映画は青春映画の傑作だが、いかんせん小さな映画で、あれだけの実績から評価して『スパイダーマン』の新シリーズを委ねるなんて、大胆としかいいようがない。若くて実績もない才能を信じて彼にかなりのものを託す。この映画のプロデューサーにとっては命懸けの大冒険である。

 結果はなかなかうまく機能したのではないか。期待通りにアクション映画ではなく、青春映画として構想されている。主人公の青年が、どんな高校生活を送っていて、それがどう変わっていくのか、という部分がちゃんと丁寧に押さえられてある。しつこいと、思う人もいるかもしれないが、そこはちゃんと描かなくてはマーク・ウェブを持ってきた意味がない。これはスーパーマンの話ではなく、ふつうの高校生の話なのだ。でも、彼が不思議な力を身に付けることで、同じ日常だったはずの周囲の世界が姿を変える。だが、そこで「特別」を描くのではない。あくまでも「ふつう」を描くのだ。驚きの力を世界平和のために使うのではなく、日常をほんの少し変える手段にしかしない。スタートはそれだけだ。

 ヒーロー物の定番を踏まえながらも、そこに埋もれた、ただのパターンにはしない。期待の最後の対決シーンもなかなかよくできていて、アクション映画としても及第点の出来。3Dはジェットコースターみたいで、楽しいけど、普通のドラマシーンでは、うざい。2時間16分とちょっと長めの上映時間だが、それは大作だし、仕方ないのかなぁ、と思う。あまりアメージングではないから、つまらないという人もいるだろうが、学園物の定番を踏まえた楽しい青春映画だと思うと、これで十分だ。サム・ライミの変態的世界が好きな人には不評だろうけど、正統派青春映画の流れを踏まえた『さわやかスパイダーマン』になっている。


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