習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

ミジンコターボ『ほらふき王女バートリー』

2014-04-18 21:04:27 | 演劇
 これでミジンコターボはなくなる。これは、今まで10年間の活動の最後を飾る作品だ。そして片岡百萬両が、今までやってきたことの総決算でもある。ここから先に彼が進むためには、この「劇団」という体制が反対に足枷になると感じたのか。それとも、体制を維持していくことが困難になったのか、その辺の事情はわからないけど、片岡さんが(もちろん、劇団員のみんなも、だ!)今以上の新しい地平を目指すために今回の解散がきっとみんなの力となるはずだ。解散は残念だけど、仕方ない。これは劇団にとっての出発である。そう認識したい。

 今回もまた、まるで絵本のような総天然色ファンタジーの世界で、明るく楽しく元気になれるエンタメ演劇を全力で見せてくれた。ここ数年やってきたことを、やり尽くした感じの作品で、これぞミジンコターボ! と、声をかけたくなるような幸福な2時間が約束される。21日まで上演されている。ぜひ、この素敵な空間を堪能して欲しい。

 うそつき王女が、本当の恋を見つける旅が描かれる。Sun!が演じる。今回片岡は演出に専念して、ほとんど登場しない。でも、もちろん当たり役であるバートラムとして(彼は今ではおじいさんになっているのだが)登場する。そうなのだ、タイトルからも想像できるようにこれは『いたずら王子バートラム』の続編である。

 いつものように華やかなダンスシーンに彩られて、簡単でわかりやすい「お話」は展開していく。14歳の誕生日を目前に控えたバートリーが、みんなから煙たがられながらも、みんなから愛されて、でも、そんな今の毎日に、ほんの少し不満もあって、だから、お城を飛び出して冒険に出る。死んでしまったけど、いつも身近にいるお母さまや、行方不明になったままのお父さまに見守られて、泥棒のパンフィロと共に旅立つ。

 ストーリーはいつものことだが、単純で、童話にあるような、よくあるお話なのだ。でも、もちろんそんなことは、どうでもいいことだ。この心地よい世界に酔いしれる。それだけでいい。役者たちが実に楽しそうに、舞台でハイテンションの演技を見せる。オーバーアクトの極致を目指す。でも、それがわざとらしいのではなく、とても作品世界にはまっていて、そういうアンサンブルがこの作品世界を造形する。精緻に作りこまれたメルヘンの世界を堪能する。2時間はあっと言う間だ。心ゆくまで楽しんで欲しい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 市川朔久子『よるの美容院』 | トップ | 『朝食、昼食、そして夕食』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。