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映画・演劇のレビュー

『花とアリス殺人事件』

2015-03-28 23:25:00 | 映画
これはないわ、と思いつつ、でも、とても気になった。仕方なく、公開最終週、レイトショーで1回こっきり上映されている劇場に足を運んだ。岩井俊二監督最新作を見逃すわけはない。だが、アニメーションであることと、今なぜ、『花とアリス』再び、なのか。よくわからなくて、大切なものに傷をつけるような気にもなって。怖くて行けなかった。

 『花とアリス』は大好きな映画だ。でも、あまりにお誂え向きで、鼻につく。少女趣味の世界をそのまま映画にしたちょっとしたオタク映画でもある。美少女映画で、鈴木杏と蒼井優が主演した。これは続編ではなく、2人の出会いを描く前日譚。そういう設定もなんだかなぁ、と思った。いっそ別物なら、素直に見れたはず。だいたい「殺人事件」ってなんだぁ? 少女の世界にそぐわない。もちろん、そんなことはわかりきっていて、だから、敢えてそうしたのだろう。そこには岩井監督のひそかなねらいがありありとある。はずだ。そこも、気になると言えば気になる。

ということで、見てきた。確かによく出来ていたし、おもしろかった。やっぱりそういうことか、と納得もした。だが、実は物足りない。ほんの少しだけど、決定的に、「ものたりない」のだ。当然ほんとうの殺人事件はない。ちょっとした都市伝説だ。「学校の怪談」のようなもの。そしてそれは、少女の思いこみでしかない。だが、それが彼女をとことん傷つける。これはそんな彼女の痛みを溶きほぐすまでのお話だ。

まるで水彩画を見ているようだ。パステルカラーの。淡い世界。それって、なんだかいかにも、じゃないか。ふたりの少女が無断で外泊する。確信犯ではなく、不可抗力だが。それは幼い恋の顛末。映画はそんなこんなをさらりと描いて見せる。だけど、それをリリカルで感傷的なものにはしない。そんなことも含めてあまりにお誂え向きで恥ずかしいのだ。とてもいい映画だ。それは認める。それに見てよかった、とも思う。だが、それほど素直には喜べない。なんだか微妙。

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