久々の三木聡監督の新作だ。そして、なんとこの題材である。彼がこんな「SF大作映画」を彼が手掛けることになるなんて、想像もつかないことだ。だから面白い。もちろん、この内容である。これは誰もが思いつきそうで誰も本気で映画にしようとは思わないような、だから、彼にしか思いつかないようなとんでもないお話なのだ。だから、期待は高まる。どんな映画が始まるのか、そこにはワクワクしかない。脱力系コメディとSF大作映画が同居する世界をどう見せるか。このバカバカしいお話をどこまでも突き詰めると、一体どこに行きつくのだろうか。そんなこと想像もつかない。答えが見えない。
最初は予想通りのアホらしさで、楽しい。だが、だんだんあまりにアホらしすぎて、徐々に気持ちが醒めてくる。確かにこれは怪獣のあとしまつを巡るお話では、ある。でも、途中から、ただのいちびりでしかなくなる。政府の高官たちがあそこまでアホなやり取りに終始するのにはさすがにあきれるしかない。リアルと笑いのコンビネーションが悪すぎる。でくの坊でもう動くことのない大怪獣はそれはそれでいいのだけど、メインの人間ドラマのほうがあまりにいちびりすぎていて、これではお話に乗れない。それにお話自体もだんだん尻すぼみしてくる。ドキドキやワクワクがなくなってきて、ダラダラしてくるばかり。
特撮も見事だし、せっかく主人公である山田涼介があんなに頑張っているのにこれでは報われない。周囲のハチャメチャの中で、彼はもう何をどうしてらいいのかわからない状態である。それは土屋太鳳も同様、主役のこのふたりは真面目にこの現実(映画)と向き合うけど、周囲の人たちはめちゃくちゃで滑りまくるギャグやおふざけの中で、いたたまれない。濱田岳(!)と3人による恋愛ドラマなんかも描かれるけど、本筋とはあまり絡まないし、絡めようもない。
それにしても、ラストのオチ。あれにはもう唖然とするしかない。それはいくらなんでもないでしょ、と思う。おふざけも度が過ぎると笑えないし、笑いは凍る。うんこ、おならで笑わせるという幼児レベルの言葉の応酬も寒い。
三木監督はこの題材を思いついた時、きっとしめしめと思ったはずだ。これはきっと面白い映画になるアイデアだ、と。それを彼なりのシュールな世界に落とし込もうとした。だが、なぜか失敗した。これはシリアスな展開と抱き合わせにしなくては2時間の映画にはならないだろう。後半の失速の原因もそこにある。素材を持て余してしまったのだ。こんなにもおもしろい思い付きに溺れてしまい、でも、十分な展開が出来ずにずぶずぶと沈んでしまったって感じだ。結果、今回は完全に沈没状態。
見終えた時、僕はあまりのことに脱力してしまい、しばらく椅子から立ち上がれなかった。クレジットの後のマーベル並みのラストの後押しの惨さ。もうどうにでもして、と思う。