14歳から20歳までの大切な時間、その想い出のひとつひとつがここにはしっかりつまっている。これは彼女の大切な想い出を描く小説だ。それがファンタジーの意匠を纏って描かれていく。想い出を預かる魔法使いとの物語だ。だが、彼女は預けない。魔法使いと少女の6年間の物語のひとつひとつは、大切な想い出となって彼女の心の中に残っていく。
誰だって忘れてしまいたいような嫌な想い出や、実際に忘れてしまうような想い出もあるだろう。すべて覚えているわけにはいかない。大切だったはずなのに、時の流れとともに消えていく想い出もある。
この小説が描くものは、本当にとてもさりげないものだ。想い出を買い取ってくれる魔法使いなんてこの世には存在しない。だけど、主人公の里華は出会ってしまった。彼女だけではない。この町で暮らすたくさんの子供たちもまたその魔法使いの存在を知っている。これは公前の秘密だ。
ここに小遣い稼ぎのため想い出を売りにくる小学生はたくさんいるようだ。中学生だった里華は、新聞部の取材でこの魔法使いにインタビューする。そこから話が始まる。
だが、これはあくまでも彼女の6年間の物語だ。魔女は話相手でしかない。里華の日々の出来事が綴られていく。そこで魔女は脇役として登場するばかりだ。ファンタジーのはずが、そうはならないのは、お話の根幹が里華に生きた時間の方にあるからだ。基本はあくまでも彼女の中高生時代をフォローする普通の青春小説なのである。
心が弱くなってしまった子供たちが、この大人の知らない秘密の場所にやってきて、お金と交換に想い出を預けていく。そんな不謹慎なことが、ちゃんとまかり通っている。想い出はお金なんかでは買えないことは誰もが知っていることだ。だが、もし想い出をお金と交換できたなら、10代の子供たちにとってはとても魅力的なことだろう。だが、この設定自体が話を動かすことはない。
里華は魔法使いに想い出を預けたりはしない。それだけではない。反対に彼女から想い出を貰うのだ。あのラストがうれしい。魔法使いは、彼女の記憶を消さない。子どもたちは自分の存在を20歳になったならすべてを忘れてしまう、というルールを破るのだ。
ここでの時間は子供だけの特権だった。そんな駆け込み寺を舞台にして、この小説は、人と人とがどう関わって生きていくべきなのかを教えてくれる。
ドライな考え方をする里華の恋人だった雪成くんが印象に残る。彼は、子供の頃の恋愛なんか本当の愛と出会うための練習でしかない、と言う。そうして里華の純粋な想いを踏みにじる。でも、彼の割り切り方のなかには、ひとつの真実がある。もちろんそれがすべてではないことは当然のことだ。だが、そんなことも含めて、この小説の中には単純ではないいろんなことが散りばめられてある。児童書のような内容に見せかけてその実は、けっこうシビアな現実をきちんと見せる大人向けの作品なのだ。
誰だって忘れてしまいたいような嫌な想い出や、実際に忘れてしまうような想い出もあるだろう。すべて覚えているわけにはいかない。大切だったはずなのに、時の流れとともに消えていく想い出もある。
この小説が描くものは、本当にとてもさりげないものだ。想い出を買い取ってくれる魔法使いなんてこの世には存在しない。だけど、主人公の里華は出会ってしまった。彼女だけではない。この町で暮らすたくさんの子供たちもまたその魔法使いの存在を知っている。これは公前の秘密だ。
ここに小遣い稼ぎのため想い出を売りにくる小学生はたくさんいるようだ。中学生だった里華は、新聞部の取材でこの魔法使いにインタビューする。そこから話が始まる。
だが、これはあくまでも彼女の6年間の物語だ。魔女は話相手でしかない。里華の日々の出来事が綴られていく。そこで魔女は脇役として登場するばかりだ。ファンタジーのはずが、そうはならないのは、お話の根幹が里華に生きた時間の方にあるからだ。基本はあくまでも彼女の中高生時代をフォローする普通の青春小説なのである。
心が弱くなってしまった子供たちが、この大人の知らない秘密の場所にやってきて、お金と交換に想い出を預けていく。そんな不謹慎なことが、ちゃんとまかり通っている。想い出はお金なんかでは買えないことは誰もが知っていることだ。だが、もし想い出をお金と交換できたなら、10代の子供たちにとってはとても魅力的なことだろう。だが、この設定自体が話を動かすことはない。
里華は魔法使いに想い出を預けたりはしない。それだけではない。反対に彼女から想い出を貰うのだ。あのラストがうれしい。魔法使いは、彼女の記憶を消さない。子どもたちは自分の存在を20歳になったならすべてを忘れてしまう、というルールを破るのだ。
ここでの時間は子供だけの特権だった。そんな駆け込み寺を舞台にして、この小説は、人と人とがどう関わって生きていくべきなのかを教えてくれる。
ドライな考え方をする里華の恋人だった雪成くんが印象に残る。彼は、子供の頃の恋愛なんか本当の愛と出会うための練習でしかない、と言う。そうして里華の純粋な想いを踏みにじる。でも、彼の割り切り方のなかには、ひとつの真実がある。もちろんそれがすべてではないことは当然のことだ。だが、そんなことも含めて、この小説の中には単純ではないいろんなことが散りばめられてある。児童書のような内容に見せかけてその実は、けっこうシビアな現実をきちんと見せる大人向けの作品なのだ。