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映画・演劇のレビュー

汐見夏衛『傷だらけの僕らは、それでもいつか光をみつける』

2024-01-14 07:33:00 | その他

長いタイトルがパターンになっている汐見夏衛の小説を初めて読む。昨日見た映画が気になって(気に入って)読んでみることにした。

 読みながらなんだかもどかしい。なかなか話が進まないのだ。もう100ページまで読んでいるのにずっと虐められているばかり。陰湿な虐めで追い詰められていく。だが、それなのに、いつまで経っても話が進まないことが何故か心地よい気もする。お話で引っ張っていくのではなく、今この瞬間を大事だと思うこと。それが描かれているからだ。たとえふたりが昼休みに旧校舎で語り合うだけであっても。彼が何者であろうとも。そんな時間を丁寧に描く。
 
高校を舞台にした学園ドラマは少女マンガの定番だけど、これは一応小説。表紙のイラストは漫画だけど、分類したらYA小説になるんだろうか。まぁそんなことはどちらでもいい。
 
旧校舎の幽霊というあり得ないこと。噂話。瑠璃が出会った五十嵐紺という同級生。ガールミーツボーイのお話。だがこれはふたりのラブストーリー、というわけではない。(150ページのところまで読んでここまで書いた後、後半は翌日に持ち越し)
 
さて、(ここからは翌日)200ページを越えてもまだ虐めは終わらない。それどころかエスカレートしていく。280ページしかないのにどういう結末を付けるのか、かなり気になってきた。そしていきなりの大団円。一気に解決するのは先に見た2本の映画と同じパターンだ。これが汐見夏衛の究極の収め方なのだろう。
 
彼が不登校で、保健室登校をしていたこと、彼の病、彼が彼女を知った理由。彼女を助けた訳。これって『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく。』と全く同じじゃないか、と笑ってしまった。あちらは屋上がアジールだったけど、こちらは使われなくなった旧校舎。避難場所での話というのもまるで同じ。
 
だが、それが心地よいのも同じだ。このワンパターンが彼女の究極のやり方なのだろう。彼女を虐めていたクラスメイトでバスケ部の仲間(だった女)もまた、同じ。彼女は改心するのではなく、変わらないけど、本音をぶつける。それによって和解はしないけど、分かり合える。安易な展開はしないのがいい。
 
この3日で3つの汐見夏衛を見たり読んでみて、とても楽しかった。新しい作家に出会えて嬉しい。

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