かなり期待した。どんな映画になっているのか、想像もつかなかったからだ。とんでもないことが起きている。だいたいZQNってなんだよ、というわけのわからなさ。もちろん、説明なんかない。問答無用の感染パニック。何が何だか、わからないけど、やつらが襲ってくるのだから逃げるしかない。
見終えてみたら、要するに、ただの『ゾンビ』の日本版なのだが、それを低予算のホラー映画として作るのではなく、かなりの大予算の大作として作るのだ。こういうのは今まで日本映画ではなかった。バカバカしくてやらない、ということだ。でも、やっちゃった! そういう意味でこれは画期的、のはずだったのだが、なんだか途中から雲行きが怪しくなる。
富士山の上に登れば安心(なんだ、それは!)、ということで、主人公の2人(大泉洋と有村架純)はどんどん逃げていくのだが、途中のアウトレットモールで、ここに籠ってゾンビと戦うグループに捕まる。ここから映画は俄然つまらなくなる。だって、これじゃぁ、ただのロメロの『ゾンビ』のサルまねではないですか。
どうして、こんなつまらない話になるのだろうか。作品世界はまるで広がらないのが、つまらない。別に何が起きていて、どうなるか、とかいうようなことを、はっきりさせろ、とかは言わない。でも、見たことのないような世界を見せて欲しかった。冒頭の部分なんか実に面白い。売れないマンガ家である35歳の冴えない男、大泉洋の日常描写になんだかわからないけど、不穏な空気が立ち込めていくさまにドキドキする。同棲する恋人との諍い。次第にどうしようもなくなっていく閉塞感。そこに、いきなりとんでもない事態が起きる。うまい出だしで、乗せられる。家に帰ると恋人が、ゾンビになっていて襲いかかるシーンなんか、笑える怖さ。こういうのが平穏なはずの日常に起きる衝撃。ここから想像を絶することがどんどん起きてきて、それとなんとかして向き合う。今ある現実と戦い、未来を勝ち取る。これはそんな映画になるべきなのだ。そうだったんだ。
なのに、どんどんお話を小さくして、途中からはもうどうでもいいような映画になり下がる。猟銃を手にして戦う彼がかっこいいヒーローに見えるようなクライマックスを作ったはずなのに、ようやく銃を撃ちまくった時には、もうなんだかどうでもいいような気分にさせられていた。2時間7分の大作なのに、これはないわぁ、と思う。今まで斬新な世界観を何度となく提示してきた佐藤『GANTZ』信介監督作品なのに、これではがっかり。