ホラー映画は大好きだった。だいたい『エクソシスト』から始まったのだ。僕が映画に嵌ったのは。中学の時だった。前売り券が余ったからいかへんか、と友人に誘われて行った。怖い映画は苦手だったのに、仕方なく付き合いで。忘れもしない梅田東映パラス。それまで映画は近所の2番館にしか行ったことがなかったから、ロードショー初体験。凄かった。映画もだが、映画館という場所が。大きな綺麗な劇場。予告編が終わるとスクリーンがいきなり大きく広がっていく。なんなんだ、と驚く広瀬少年。巨大スクリーンであの恐ろしい映画が始まる! 映画ではなく、映画館で見る映画が、好きになった。ホラーも、ね。
でも、最近のホラーはあまりにマニアックになりすぎて、僕の中ではもうどうでもよくなっている。ピークはサム・ライミやトビー・フーパーの時代、70年代後半から80年代だろう。『悪魔のいけにえ』から始まり、『死霊のはらわた』、そしてジャパニーズ・ホラーの『リング』『呪怨』くらいまでであろう。ナ・ホンジンがホラーに挑んだ『新手のホラー『哭声 コクソン』は確かに面白かった。今回、あの映画をさらにパワーアップさせた作品ではないか、と期待させる。ということで、見に行った。
けど、今回は期待外れ。今回、ナ・ホンジンはタイとの合作でこの作品を制作した。バンジョン・ピサンタナクーンに監督を依頼した。どうして自分で監督をしなかったのだろうか。前作を進化させるために舞台をタイに持ってきて、現地の伝承を取り入れたからか。韓国、タイ合作映画なら、共同監督でもよかったのではないか。本来彼がやりたかったことがここでは生かされていないような気がして残念だ。『哭声 コクソン』にあった怖さがここではただのえげつなさに転じている。フェイクドキュメンタリーは今までもたくさんあったけど、今回は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のような低予算ではなく、大予算でこのスタイルに挑んだ。確かに迫力満点だけど、なんだかなぁ、という作品に仕上がっている。なんだかいろんな要素がごった煮で、何がしたかったのやらよくわからない映画に成り下がっている。こんなはずじゃなかったのではないか。
悪魔に憑依されるヒロインの女性が(とてもきれいな女性!)どんどん狂暴化していき、えげつないモンスターになっていく部分の描写は凄いけど、それだって途中からやりすぎじゃないか、と思う。過激や過剰は時として作品から本質を損なう。映画の前半は興味深いな、と思えたけど、だんだんどうでもよくなってきた。2時間11分は長い。