ゴン駄々吉が何をしてくれるのか。ドキドキする。毎回信じられないようなバカな芝居を誠実に全力投球して見せてくれるからだ。しかもこのタイトルだ。チラシも大胆。そこにはわけのわからない世界が展開するはず、と期待する。
その期待は驚きになる。今までの作品だって呆れてしまうくらいにめちゃくちゃだったけど、今回は完全にタガが外れている。役者たちはもうどうとでもして、って感じでヤケクソに。冒頭、巨大な太陽が上がり百鬼夜行(海の妖怪たち)のパレードが始まる。なんだこれは。『ライオンキング』が始まるのか、なんてね。
もみいち(西マサト)はテル子(速水佳苗)に出会った瞬間、恋に落ちる。いきなりのプロポーズ。ふたりは結婚して彼は王乃上家(銭湯をしている)の婿養子となる。
だいたい劇場に入った瞬間から呆れる。なんだ、このオブジェは! と。あの巨大な舞台美術は圧巻。これがセットのほぼすべてだ。ドンと置かれていて、その上で芝居は(ほぼほぼ)展開する。この円形の装置は回転するし。いろんな仕掛けで楽しませてくれる。これはお風呂の湯船であり、海。または船。この船に乗ったもみいちたちの冒険が描かれる。
ストーリーはない。あるけど、ない。壮大なスペクタクルかというと、そうでもない。なんだかしょぼい。そこでは懐かしい『時間ですよ』みたいなお話が展開しているような。お風呂屋だから、ね。小さな銭湯を舞台にした人情劇。壮大なスケールのハリボテ。こんな芝居見たことない。