2部作、4時間の大作として上演される。幕末から明治にかけて、動乱の時代を生きた男たちの群像劇。中心にいるのは坂本龍馬だ。彼の残した5つの羅針盤を巡る物語である。龍馬の死の謎を描くミステリーでもある。そして、なによりもまずは男たちの冒険物語である。「海賊王に俺はなる!」というのは『ワンピース』の主人公だが、船を手に入れた龍馬はまるでルフィのようだ。この作品が目指すのは歴史の真実ではなく、歴史のロマンである。狭い国からは旅立ち世界を目指す男の物語を壮大なスケールで描こうとする。江戸幕府を倒すとか、新政府を作るとか、そんなこと、どうでもいい。彼は自分の夢を実現するために戦う。尊王とか攘夷とか、興味ない。幕末を舞台にした作品は枚挙に暇もない。そんな膨大な量の作品とは一線を画するものを作らなくては意味がない。作、演出、照明を手掛ける大塚雅史さんは今までも熱い芝居を作り続けてきたが、今回もその流れに乗ってこの大作に挑む。ここからきっと渾身の力作が生まれるはずだ。
いつも様々な仕掛けで驚かされるけど、今回は「縄」である。10数本の縄を縦横に使いそれが舞台美術のすべてを担う。縄が象徴するもの、縄でできること。そこからはいろんな意味での解釈やビジュアルが可能だ。縄を使う。そんな簡単なもので、でもそれ故に、こんなにも複雑で困難な舞台作りとなる。芝居をして殺陣やダンスだけでも大変なのに、役者たちは縄を使った様々なパフォーマンスをこなすことが求められる。それだけでリアルな船や波、さらには主人公たちの心情、を視覚的に表現する壮大なスペクタクルを見せる。
2時間強の作品として仕上げるためにはどうしてもストーリー部分が弱くなる、というのはブルーシャトルの弱点だったが、今回は2部作構成ということで、しっかりとしたドラマを立ち上げることができる。できる、というより、そうしなければ成立しない。ブルーシャトルは魅力的な男優たちによるダンスとパフォーマンスを中心に置いた作品作りを旨とする。いつものようにセンターには松田岳がきて、周囲をたくさんのメンバーたちが支える。2時間の半分以上がダンス・パフォーマンスなのだ。だから、なかなかストーリー重視の作品を作れない。そこが弱点でもある。だが、今回は大丈夫。4時間の作品にするからではなく、それを2時間ずつにして上演するからである。お話重視であるのならば、4時間を一気に見せなくては、観客が納得しない。しかし、彼らの作品に場合は、そうじゃない。
芝居は龍馬という中心を核にして織りなす人間ドラマとして全体を構成する。誰もが夢見た新しい世界。個々の中にある夢がどういう形で実現していくのか。志半ばで死ぬことになる龍馬のドラマは、予め定められた結末に向けてカウントダウンしていくのではない。彼の夢がそれぞれの中に伝わり、そこで育てられていくのだ。だから、お話は龍馬の死で終わるのではない。羅針盤を手にした仲間たちのその後も視野に入れて、展開していく。時制は前後する。幕末と明治が混然となる。西南戦争で西郷が倒れるドラマも並行して描かれる。自分の船を手に入れて海に出るシーンで終わるのかと思ったが、もっと先まで描いていた。どこで切るかが難しい選択だし、後半の予告編となるシーンもちゃんと入れなくてはならないし、お約束が満載で大変なのだが、職人でもある大塚さんはうまくまとめて2時間に収めた。1本の作品としての完結性はないけど、十分に納得のいく作品に仕上がったし、後半に期待させるテンションの高さも観客を満足させたのではないか。
2部作の常として、前編で大きく開いた可能性を、全体のお話の中にちゃんと収めるために後編でそれを閉じてしまうというのがよくあるパターンなのだが、その轍を踏まない作劇を期待しよう。第2部は来年2月。
いつも様々な仕掛けで驚かされるけど、今回は「縄」である。10数本の縄を縦横に使いそれが舞台美術のすべてを担う。縄が象徴するもの、縄でできること。そこからはいろんな意味での解釈やビジュアルが可能だ。縄を使う。そんな簡単なもので、でもそれ故に、こんなにも複雑で困難な舞台作りとなる。芝居をして殺陣やダンスだけでも大変なのに、役者たちは縄を使った様々なパフォーマンスをこなすことが求められる。それだけでリアルな船や波、さらには主人公たちの心情、を視覚的に表現する壮大なスペクタクルを見せる。
2時間強の作品として仕上げるためにはどうしてもストーリー部分が弱くなる、というのはブルーシャトルの弱点だったが、今回は2部作構成ということで、しっかりとしたドラマを立ち上げることができる。できる、というより、そうしなければ成立しない。ブルーシャトルは魅力的な男優たちによるダンスとパフォーマンスを中心に置いた作品作りを旨とする。いつものようにセンターには松田岳がきて、周囲をたくさんのメンバーたちが支える。2時間の半分以上がダンス・パフォーマンスなのだ。だから、なかなかストーリー重視の作品を作れない。そこが弱点でもある。だが、今回は大丈夫。4時間の作品にするからではなく、それを2時間ずつにして上演するからである。お話重視であるのならば、4時間を一気に見せなくては、観客が納得しない。しかし、彼らの作品に場合は、そうじゃない。
芝居は龍馬という中心を核にして織りなす人間ドラマとして全体を構成する。誰もが夢見た新しい世界。個々の中にある夢がどういう形で実現していくのか。志半ばで死ぬことになる龍馬のドラマは、予め定められた結末に向けてカウントダウンしていくのではない。彼の夢がそれぞれの中に伝わり、そこで育てられていくのだ。だから、お話は龍馬の死で終わるのではない。羅針盤を手にした仲間たちのその後も視野に入れて、展開していく。時制は前後する。幕末と明治が混然となる。西南戦争で西郷が倒れるドラマも並行して描かれる。自分の船を手に入れて海に出るシーンで終わるのかと思ったが、もっと先まで描いていた。どこで切るかが難しい選択だし、後半の予告編となるシーンもちゃんと入れなくてはならないし、お約束が満載で大変なのだが、職人でもある大塚さんはうまくまとめて2時間に収めた。1本の作品としての完結性はないけど、十分に納得のいく作品に仕上がったし、後半に期待させるテンションの高さも観客を満足させたのではないか。
2部作の常として、前編で大きく開いた可能性を、全体のお話の中にちゃんと収めるために後編でそれを閉じてしまうというのがよくあるパターンなのだが、その轍を踏まない作劇を期待しよう。第2部は来年2月。