初めて見る劇団である。作、演出は大川朝也さん。昨年の11月に公演する予定だったのだが、延期となり、ようやく仕切り直しての上演だ。昨年案内をいただき、楽しみにしていたが、直前に中止の連絡をもらい、ガッカリしていた。今回無事に公演ができてよかった。
端正な小品である。無理も野心もなく、丁寧に作ることを第一にしているとてもいい芝居だった。気持ちがいい作品なのである。作り手の誠実さがしっかり伝わってくる。不本意な延期から10カ月のインターバルを経て、作品がどう変わったか(変わらないか)はわからないけど、これを作りたいという気持ちがしっかり見えてくる作品だったのがうれしい。終演後、お話しした大川さんは芝居と同じように真面目で誠実そうな人だった。
ひとり暮らしの部屋が舞台となる。そこに知らない人たちが(会社の人たちが)やって来て、大騒ぎする。もちろんこれは妄想だけど、やけにリアルなのは彼女が抱える悩みや苦悩がそこには反映されているからだ。流星群を見に行こうという彼ら。突然の訪問に戸惑い、当然彼らを受け入れることはできない。
ホームセンターのタイムセールで買ってしまったウツボカズラ。植物なのに動物のような存在は、彼女と似ている。彼女が周りに感じる違和感に似ている。みんなと同じにすることができない。協調性がないわけではないが、距離を感じる。
職場の飲み会に嫌々参加した。酔っ払ってしまい、居眠りをした。妄想はその時見た夢か。飲み会の席で、話の流れから勢いで2日後、みんなで流星群を見に行くことになる。ほんとは行きたくない。冒頭の妄想はこの飲み会が見せた夢だった。
27歳。仕事にやりがいはない。今の部署では彼女はメンバーの先輩にあたる立場にあるが、年下の子たちと上手く付き合えない。それどころか周りに気を使われている。仕事は生活する為。割り切っている、つもり。趣味は漫画を描くこと。それが仕事になったら、と昔は思っていたが、今はもうそんな夢は見ない。同僚から漫画を趣味と言われたら、むかっ、とする。そんな簡単なものではない、とは、今は大人だから言わないけど。腹が立つ。そんな彼女が抱える苛立ちと諦めの日々が描かれる。うちにため込んだ暴力的な衝動は抑えられる。
たった70分の芝居は彼女の焦燥を静かに描く。爆発はしない。彼女の日常は変わらない。ただ、このまま時を過ごす。芝居はそんな停滞感を描く。「何」があるわけでもなく、ただ、少し「何か」が変わっていく、かもしれない。そんな微妙な心情が抑えたタッチで描かれる。これは小劇場だから可能なささやかな心情を描く小さな佳作である。とても真面目で誠実な作品、好感が持てる。