![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/27/55a54c820ce4ee39943fd961221e8a11.jpg)
今年の7月頃に公開されていた篠原哲雄監督の最新作である。映画館で見たいと思っていたがすぐに上映が終わっていたので見逃していたけど、早くも配信がスタートしていてさっそく見た。(先月配信がスタートしてすぐに見ているので、もう見てから3週間ぐらいになる。なぜ今頃書くのかというと、実はここに書くのを忘れていたのを思い出したからだ。言い訳になるけど、どうしてもTVで見た映画は膨大すぎてここに書く時間が作れないまま時間が過ぎていく場合が多くなる)
ささやかだけど、とてもいい映画で、篠原監督らしい作品だった。犬のことが大好きで、犬のためならなんでもできる、というくらいの勢いで、だから獣医学科に入って犬とかかわり生きていこうとした男(林遣都)のお話だ。大学時代、犬部を作った。そこで殺処分される犬を保護して飼い主を探し出すという保護活動を続けていた。今でも獣医として、仕事というより、相変わらず「犬命」の毎日を過ごしている。犬たちのためなら自分のことなんか顧みないで必死になる。その結果、警察沙汰すら辞さないバカな男だ。見ていてあきれるやら笑えるやら。でも、なんかこういうバカバカしさは好きだ。そんな男をクールな林遣都が演じているから、暑苦しくもないし、嘘くさくないのがいい。この映画が素敵なのは彼のキャラクターゆえであろう。篠原監督はこのお話を感動物語にはしない。熱意の押し付けになると観客は引いてしまう。冷静に距離を置いてみつめていくから、反対に僕たちのほうから彼に共感していくこととなる。そのへんのバランスがうまい。
その対象は「犬」だけではなく、「何か」でいい。好きなことの「何か」のために必死になる姿を見るのは楽しい。そこに普遍性が生じるから共感が生まれるのだ。そこに描かれるものは誰にも心当たりのあることとなる。
安易に恋愛とかいらない要素は差しはさまない。ただただ大好きな犬命で突き進む。単調になりそうだけど大丈夫。原作(原案)は「北里大学獣医学部 犬部!」(ポプラ社刊)。このドキュメントを題材にしてドラマを仕立てる時、どうしても人間に寄り添いすぎて題材としたお話のほうがおざなりとか、添え物になる傾向があるけど、この映画はそこでも絶妙なバランスを保つ。脚本に「動物ドキュメンタリーの名手」(らしい)の山田あかねさんを迎えたからだろう。こういうアプローチでは、商業映画としては地味な映画になるけど、篠原監督はそんなこと気にしないでこの素材と向き合い、誠実な映画作りをしようとした。
動物愛護をテーマにした映画ではなく、好きなことのために全力で戦い、生きるバカな男のお話としたのがよかった。そんな彼を周囲のみんなが支えるハートウォーミングとすることで、確かに甘い映画だけど、誰もが納得し、共感を呼ぶ作品に仕上がっている。だけど、残念ながら劇場公開時には興行的にはセールスがうまくいかず、ヒットしなかった。やはり地味すぎてダメだったのだろうか。残念だ。