クリストファー・ノーランの新作が公開された。コロナの影響でハリウッドの大作映画は軒並み公開延期の中、久々に超大作の登場である。期待は高まる。しかも、事前に難解で1度見ただけでは理解不能というなんだかとんでもない情報が流れる中、まず目撃せよ、とばかりに、事前情報はそれだけで劇場に向かう、さすが、公開2日目の土曜である。満席状態。でも、隣の席は空いているから、圧迫感はなく広々としているしのんびり見れる。
いきなりのテロ。劇場での殺戮シーンから始まる。そこからお話は一気に急展開していく。事前の評判通りの複雑で、理解しずらい設定だ。時間軸をずらして、あるいは逆転させて、過去と未来が逆転したり、同時進行したり、もうなんだかわからない複雑さ。でも、なんだかわけのわからない展開になんとかのっかりスクリーンから目が離せない。2時間半はあっという間の出来事だ。分類上はSFということになるのだろうが、リアルなスパイアクションだ。死んだ男と、これから人類を巻き添えにして自殺する未来人とのこの世界の存亡をかけた戦いが描かれる。壮大なスケールの映画なのだけど、細部の整合性が理解できない。こんな不親切な超大作映画って、ありなのか。『インセプション』も大概だったけど、その比ではない。こんな映画にGOサインを出して、これだけの大予算を組み、平気で制作させるワーナー映画って凄い。ノーランだから許されたのだろうが、それにしても、大胆不敵な挑戦だ。
アクションのつるべ打ちというわけではないけど、どんどん話は展開していくから、これはなんなのか、と考えているうちに、わかるより早く、話は先に進む。しかも、目を奪うような派手なアクションも忘れない。怒濤の展開なのだ。さらにクライマックスのもう何がなんだかわけわかめの戦場のシーンと、船の中での男と女のやりとり。緊迫感の持続はそこに極まる。
うまくストーリーは説明できない。こんなのありか、ずるいと突き放すことも可能だ。でも、そんなこと、わかったうえで、ノーランはやっている。当然の話だが、きめ細かく整合性のある脚本がきっと書かれているはず。ただ話が早すぎて僕が理解できないだけ。だから、1度では無理、というのだろう。だってじっくり考えていたりしたなら、この映像と音響の怒濤のコラボに乗り遅れるからだ。