ホラー映画を2本見た。ホラーと書いたが、僕はホラーだとは思わないけど。Amazonプライム・ビデオの分類がそうなっていた。前者は『ゲット・アウト』『アス』のプロデューサーが仕掛けた作品で、後者はサム・ライミのプロデュース。2本とも新人監督を起用した。
『アンテベラム』は腹立たしい映画かも知れない。仕掛けがなかなか巧妙で驚くけど、不親切だし、リアリティはない。だけど、こういう悪意はなんとなく想像できるから怖い。いきなり南北戦争時代の南部の農園が出てきての不必要な長回しには圧倒される。何が起こるのか、不穏な緊張が持続。黒人奴隷への白人による虐待が描かれていく。なんなんだこれは、と思う。事前情報は仕入れてなかったから、予想外の展開に唖然。
だけど、かなり過ぎてからのいきなりの展開にはもっと驚く。なんと別の映画が始まる。現代の都会、社会学者の黒人女性を主人公にしたお話になる。冒頭で「過去は死なない。過ぎ去ることさえない」というフォークナーの言葉が引用される。奴隷制度はなくなったはずだが、差別はなくなるはずもないし、今も堂々とあり続ける。この映画も社会派映画の定番のような「お約束」を踏まえる。だが、それをエンタメに昇華させるのが凄いといえば、確かに凄い、のだが。
ふたつの話のふたりのヒロインが同じ名前(エデン)だと提示される。ふたつの時代の黒人女性への世の中の対応が並行して描かれていくように見えるのは一瞬。南北戦争時代の農園にスマホが出てきて、恐るべき現実が明らかになる。なかなか巧妙だと、先に書いたけど、映画はそこまで。その先はない。このアイデアは生かされない。
『ドント・ブリーズ2』はもちろんヒット映画の続編。あれから8年後。前作と同じ仕掛けが繰り返されるから、退屈。目の不自由な老人が実は元レンジャーで、家の中で少女を守り敵と戦う。こういうB級映画がサム・ライミは大好きなのだ。『死霊のはらわた』の頃から変わらない。見ている分には楽しめるけど、可もなく不可もない。
2本とも、ある種の新しさはないわけではないけど、それ以上のものがない。欲しいのは「それ以上」である。仕掛けだけで終わらせてはならない。チャンスをもらったのなら『ゲット・アウト』や『死霊のはらわた』を超えた作品をつくらなければ。