アン・リーの最新作は、一度は劇場公開が決まっていたのに結局はDVDリリースのみになってしまった。考えられないことだ。3D超大作だし、これほどの傑作であるにもかかわらず、劇場で見られない。それくらいに今、映画はたくさん作られているってことか。(でも、つまらない映画が山盛り劇場公開されているのだけど、それは何?)
イラク戦争からの帰還兵たちが歩く広告塔としてイベントに駆り出される。たまたま英雄的行為をした瞬間がスマホの映像として記録され、それがTVで放送されたため、話題になり英雄として祭り上げられる。自分の命の危険も顧みず、傷ついた上官を助けるため飛び出して、助け出す。でも、その後、上官(なんとヴィン・ディーゼル!)は死んでしまうのだが。
大切なことが何で、それがどういうことに繋がるのか。なんだか微妙にいびつで、納得がいかない、と主人公のビリー・リンは思う。自分は英雄なんかじゃないし、ただの一兵士にすぎないし、当たり前の行動をとっただけ。無意識の行為を取り立てて、英雄視して、祭り上げる。彼ら8人は(同じ部隊のメンバー)はいずれも同じように若くて決して豊かではなくて、ふつうの若者たちでしかない。ビリーは特別な存在なんかではない。
クライマックスのハーフタイムショーのシーンで何万人の前でパフォーマンスをするなか、センターに立たされた彼らの戸惑いがビリーの行為に象徴され描かれる。目立とうとしたわけでは当然ない。戦場での恐怖と同じものをそこに感じ、戸惑い足が出てしまったのだ。それは上官を助けようとして飛び出した行為と同じ。無意識である。
この後、一兵卒として再び戦場に戻り、彼がどんな人生を送るのか。そんなこと、誰も知らない。でも、彼らはこの日を忘れない。