習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『TOKYO !』

2008-10-07 23:10:13 | 映画
 予想通りつまらなかった。それにしても、これだけ期待を抱かせる組み合わせは、めったにあるものではない。しかし、こういう夢の企画は時として、というかなぜかいつも、失敗する。それは期待の大きさゆえの失望という単純なものではない。

 オムニバスである。ミッシェル・ゴンドリーとレオス・カラックス、ポン・ジュノという魅力的な組み合わせ。だが、題材との距離の取り方が3者3様となり、1本の映画としての一体感はここからは生まれない。そのくせ独立した作品としても、意気込みが感じられずなんだか中途半端なのだ。彼らは果たして東京というものに心惹かれたのか。それすらよくわからない。

 もちろん過剰な思い込みは、えてして空回りする。適度の距離感は必ず必要だろう。しかし、距離を取り過ぎたら本質を見失う。要はバランス感覚なのである。それがうまくいってない。

 カラックス作品は問題外としてゴンドリーとボン・ジュノの2本はとてもいい線をいっているだけに悔しい。短編ゆえの突っ込みの浅さが、作品をつまらなくしている。これが長編だったならもう少しきちんとした世界を提示できたはずなのに。だが、もともと短編として企画されたものなのだから、それは言いっこなしだろう。40分弱という時間の中でTOKYO(東京)という魅力を通して見えてくる世界観を提示しなくては、世界の第1線の監督とは言えまい。

 あまりやる気のないカラックスはどうでもいいけど、ポン・ジュノがあんな狭い世界で閉じてしまうような映画を作ったのは納得がいかない。香川照之の引き籠り男がピザ配達の女の子(蒼井優)に恋をする、というストーリーに仕掛けられたものは衝撃的とは言えない。単純すぎるのだ。そんな中、ゴンドリーのいつもながらのキッチュな世界が今回は一番面白く見れた。

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