大森一樹監督の同名映画を原作にして木嶋茂雄さんが構成、演出した大作だ。総勢30名以上にも及ぶキャストによるアンサンブル・プレーである。交通整理だけでも大変だろうが、そんなことは普段から大人数の芝居に慣れているから問題ない。それよりこの人数を逆手にとって、人海戦術スペクタクルを目指す。アップテンポの芝居は見ていて心地よい。
しかも、アイホールの広い舞台を縦横に使った壮大なドラマは見ていて、まず目に楽しい。お話自体はかなりきつい話なのだが、華やかな演出によって、そこを緩和させる。子供から年配の方まで、幅広い年齢層のキャストを組めるのが劇団ひまわりの強みだろう。3・11以前に作られたこの原作映画を、3・11以降の気分を色濃く反映させた作品として再構築するのは、安易なことではない。もともとここに描かれる不安は、3・11以降だからこそ、明確になるものだった。見た目の派手やかさの奥に我々が抱えるさまざまな問題や危険、不安を抱え込むこの作品は、きわめて現代的なものだ。でも、大事なのは、ここに秘められた普遍性である。記憶をなくし、老いていく。自分の面倒をやがて自分で見ることすらできなくなる。誰もがやがて経験すること。それをこの作品はありとあらゆるケースを想定し、ここにコラージュした。
もちろん、このカーニバルのような空間は、精神病院や老人ホームをモデルにしたものだ。介護の現状を背後に抱える。だが、僕たちは、ここに展開する華やかな空間をまず楽しもう。彼らが生きることを能動的に受け止め、ここでの生活を楽しんでいる姿、それこそがこの作品の見せたかったものではないか。どんな状況にあろうとも人はそこで生きていく。大事なのはそのことなのだ。「世界のどこにでもある、場所」というタイトルに心惹かれた木嶋さんの想いがこの作品には満ち溢れている。この祝祭的空間を受け入れることからすべてが始まるのだ。ここは、特別な場所なんかではない。でも、ここに彼らがいる限り、どこであろうともそこは特別な場所だ。「どこにでもある」は「どこにもない」にもつながる。
もの凄い速さで展開する短いシーンをどんどん積み重ねて見せていく。そのスピード感に圧倒される。あれよあれよ思うまもなく話は転がる。考えるいとまも与えない怒濤の展開だ。そんな中で、自分の居場所を失った男が迷い込んだこの不思議な場所が描かれる。そこはデイケアを行う精神科の施設だ。そこにはさまざまな心に闇を抱えた人たちがいる。彼らと接することで、自分たちにとって大事なもの、を見つけていく。大森一樹は、きっと彼が大好きだったフィリップ・ド・ブロカの『幻の市街戦』にインスパイアされたのではないか。でも、今頃あんな古い映画を思い出すだなんて、どういう風の吹きまわしだろう。映画版もぜひ見てみたい。
しかも、アイホールの広い舞台を縦横に使った壮大なドラマは見ていて、まず目に楽しい。お話自体はかなりきつい話なのだが、華やかな演出によって、そこを緩和させる。子供から年配の方まで、幅広い年齢層のキャストを組めるのが劇団ひまわりの強みだろう。3・11以前に作られたこの原作映画を、3・11以降の気分を色濃く反映させた作品として再構築するのは、安易なことではない。もともとここに描かれる不安は、3・11以降だからこそ、明確になるものだった。見た目の派手やかさの奥に我々が抱えるさまざまな問題や危険、不安を抱え込むこの作品は、きわめて現代的なものだ。でも、大事なのは、ここに秘められた普遍性である。記憶をなくし、老いていく。自分の面倒をやがて自分で見ることすらできなくなる。誰もがやがて経験すること。それをこの作品はありとあらゆるケースを想定し、ここにコラージュした。
もちろん、このカーニバルのような空間は、精神病院や老人ホームをモデルにしたものだ。介護の現状を背後に抱える。だが、僕たちは、ここに展開する華やかな空間をまず楽しもう。彼らが生きることを能動的に受け止め、ここでの生活を楽しんでいる姿、それこそがこの作品の見せたかったものではないか。どんな状況にあろうとも人はそこで生きていく。大事なのはそのことなのだ。「世界のどこにでもある、場所」というタイトルに心惹かれた木嶋さんの想いがこの作品には満ち溢れている。この祝祭的空間を受け入れることからすべてが始まるのだ。ここは、特別な場所なんかではない。でも、ここに彼らがいる限り、どこであろうともそこは特別な場所だ。「どこにでもある」は「どこにもない」にもつながる。
もの凄い速さで展開する短いシーンをどんどん積み重ねて見せていく。そのスピード感に圧倒される。あれよあれよ思うまもなく話は転がる。考えるいとまも与えない怒濤の展開だ。そんな中で、自分の居場所を失った男が迷い込んだこの不思議な場所が描かれる。そこはデイケアを行う精神科の施設だ。そこにはさまざまな心に闇を抱えた人たちがいる。彼らと接することで、自分たちにとって大事なもの、を見つけていく。大森一樹は、きっと彼が大好きだったフィリップ・ド・ブロカの『幻の市街戦』にインスパイアされたのではないか。でも、今頃あんな古い映画を思い出すだなんて、どういう風の吹きまわしだろう。映画版もぜひ見てみたい。