岩井俊二監督が中国で撮った作品。しかもこの作品の後、『ラストレター』を撮ったらしい。順番はこちらのほうが先、というのは驚きだ。昨年公開時に見た『ラストレター』があまりに素晴らしすぎてこの作品を見るのは少し怖かった。この2作品は別物の映画だと思い見ようとしたけど、それは難しい。同じお話、だから基本同じ台本で同じ監督がほぼ同じ時期に連続して撮っているなんて、前代未聞だろう。
お話が同じだからかもしれないけど、日本版ほど、感動しなかった。先にこちらを見ていたらどんな感想を持てただろうか。わからないけど、単体の映画としてこの作品を見ることは困難だ。冷静な判断は難しい。
岩井俊二らしい作品だとは思う。ほかの作品と変わらない。中国映画である以前に、まずこれは岩井映画だ。その事実は変わらない。この淡いタッチはいつもの岩井映画だ。旅順を舞台にした懐かしい風景と上海の都会の風景が交錯し、その中で2世代の物語が、時代を超えての交流が描かれていく。お話としてはこちらのほうが自然に入ってくるかもしれない。馴染みの少ないキャストによるドラマで、そこで描かれるこの不思議な物語は自然体。それがいいのだが。
だけど、僕はどうしても『ラストレター』を贔屓してしまう。役者たちが素晴らしい。有名なスターを使っているのに彼らがとてもさりげない、あんなにも豪華キャストなのに。なぜだろうか。